東京新聞が10日朝刊から国際面で連載していた「原発脚光−米復活の現場から」が、13日で終わった。
原子力に関するさまざまな内外の動きが伝えられる中、米国の現状も一筋縄では行きそうもないことを、よく表していた。
初回に紹介されていたのは、ミシシッピ州のグランドガルフ原子力発電所だった。ブッシュ政権による政策変更で、同原発の保有者である電力大手エンタジー社に対し、同原発敷地内に新しく原子炉を建設する許可が下りたのである。米国における原子炉建設は、1979年のスリーマイル島原発の炉心溶融事故以来、長い間、凍結されていた。
「もちろん1番乗りを目指す」というエンタジー社副社長の発言とともに、「黒人が8割を占め、18%の高失業率に悩む」という地元、アメルダ市長の「税収も雇用も増え、良いことずくめで大歓迎」という声が紹介されていた。
米国の原子力政策は、単に原子力発電を増やすだけが目的ではない。高速炉の導入、ウラン燃料のリサイクルも含め、最終的に放射性廃棄物の量を減らすことまで狙っている。さらに、国際的な核不拡散体制の強化も。
こちらの現場になると、様相は一転することを、連載2回目と3回目の記事は示している。
高レベル放射性廃棄物の最終処分地に予定されているネバダ州のユッカマウンテンでは、地元の同意がなお得られていない。「核実験場や原発のごみなど迷惑施設を全部ネバダに持ってくるのはおかしい」という州政府の原発問題担当官の言葉とともに、州選出のリード上院議員(民主党)の「何があっても阻止する」という激しい言葉が、紹介されていた。
ニューメキシコ東部の街、ロズウェルのルポは、再処理工場建設の予定地にされて、住民の声が2分されてしまっている街の様子を伝えていた。
原発から出る使用済み燃料から、ウランとプルトニウム(米国の場合は、アメリシウムとネプツニウムなども)を回収して再利用し、併せて処分する放射性廃棄物の量を少なくする—。これを可能にする再処理もまた、米国では30年ほど、凍結されていたのである。
この再処理計画は、核不拡散体制の強化という狙いもある。米国内だけでなく、海外からの使用済み燃料の再処理も引き受けることになっているからだ。米政府が提案した「国際原子力パートナーシップ(GNEP)」は、核兵器製造につながる濃縮、再処理を米国、英国、フランス、ロシア、中国、日本の6カ国に限定するというものだ。
記事は、再処理工場の建設候補にあげられたロズウェル住民の不安の声とともに、「あまりに一方的で国際的に通用しない」というGNEPの構想自体を批判する専門家の声が、紹介されていた。
GNEPは、日本の原子力政策にとっても好都合の構想で、これがうまく進むかどうかは、再処理—高速増殖炉開発を軸とする日本の原子力計画の進展をも大きく左右する、と見られている。
東京新聞の連載記事から分かることは、米国内でも、原子力推進は簡単には行かないということのようだ。