東日本大震災が発生して8年目の日を間もなく迎えようとしていた3月4日、「都市防災備災の現状と展望」と題したシンポジウムが大阪市中央公会堂(同市北区中之島)で開かれた。科学技術振興機構(JST)が主催する「サイエンスアゴラ」は、毎年お台場地域で開催される以外にも全国各地でさまざまな連携企画が催されている。今回の企画は「サイエンスアゴラin 大阪」と位置付けられ、「産官学ネットワークの共創に向けて」というサブタイトルが付けられた。日本はこれまでもこれからも、「地震大国」、「火山大国」であり、「自然災害大国」だ。過酷で、残酷で、悲惨であった「3.11」を経験したこの国にとって、防災や減災は最重要課題。シンポジウムでは、登壇者から危機感や現場感覚に基づいた具体的な問題提起が続いた。そして災害対策の上でも「産官学」の連携が大切であることを確認する場となった。
このシンポジウムは、「大阪大学共創機構」が主催し、「中之島まちみらい協議会」とJST、「アートエリアB1」が共催した。会場には市民ら約170人が参加し、多く参加者が「都市防災備災」は国レベルでも自治体のレベルでも、地域のレベルでも、そして自分たち一人一人にとっても喫緊の課題であることを強く認識し、そして共有した。
この日のシンポジウムは大阪大学副理事で大学院理学研究科教授による寺田健太郎さんの総合司会で始まった。
まず主催者を代表して大阪大学理事・副学長の小川哲生さんがあいさつした。
「今回大阪でこの企画を開催することの位置づけをまず議論した。その結果、日本では自然災害が増えていて、昨年は大阪でも地震があり、台風も来た。都市防災、備災がキーワードになると。そして災害に備えて我々都市にいる者に何ができるかを考えると研究者だけでなく、自治体や企業、そして市民が一緒に討論して、意識を共有していこうという結論になった」。小川さんは今回の企画の狙いや経緯をこう説明した。
小川さんは、会場となった大阪市・中之島地区が大阪大学発祥の地であることを紹介。「中之島地区は大阪の中心地。ここで防災について議論することにより、災害に強い街にし、もし災害が起きてもお互いが助け合える街づくりを進めていきたい」と述べた。
「世界一の地震・火山大国に暮らすということ」
続いて「世界一の地震・火山大国に暮らすということ」と題した基調講演が始まった。講演者は神戸大学海洋底探査センターの教授で同センター長の巽好幸さん。巽さんは日本を代表する火山学者で、専門は火山のマグマ学。地球をはじめとする惑星の進化や日本でも起きていた超巨大地震のメカニズムなどをマグマ学の視点から考察している。
巽さんのメッセージは明快で、早速スクリーンに映し出された。「世界一の地震・火山大国に暮らすということ」。日本人はそういう国に暮らしていることを強く自覚して、国、地域、企業、個人などあらゆるレベルで防災のための方策を、災害自体は防げないのなら少しでも被害を少なくする方策をとらなくてはならない—。そういう強いメッセージが込められていた。
巽さんは「日本人はずっと自然(災害)と立ち向かってきたが(防災の観点からは)あまりいい災害観を持っていないのではないか」と切り出した。そして破壊的、破滅的な被害を及ぼす「巨大カルデラ噴火」を中心に話を進めた。巨大カルデラ噴火は「破局噴火」とも呼ばれる。巽さんによると、富士山噴火の数十〜数百倍という、とてつもない量のマグマを吹き上げる噴火で、日本列島では何度も起きている。その中でも約7300年前には、九州・鹿児島県南方沖の海底火山(鬼界カルデラ)の大噴火が起きて、当時南九州を中心に栄えていた縄文文化に壊滅的打撃を与えたとされている。また阿蘇山では約9万年前に巨大カルデラ噴火が起きて山体が崩壊し、火山灰が日本列島を広範囲に覆ったとされている。
巽さんはまず、日本列島がユーラシアプレートと北米プレートの2つのプレートに乗っていて、そこにフィリピン海プレートと太平洋プレートが沈み込んでいるという大陸地殻の構造を説明。「日本列島は4つのプレートがせめぎ合っているところにある」「世界の大地震の1割程度が日本で起きている」などと指摘して、なぜ「世界一の地震大国」なのかをスライドを映しながら分かりやすく解説した。
「日本列島は今でもプレートにぎゅうぎゅう押されている」。巽さんは、日本列島が、いかに地震が起きやすい状況にあるか、また世界の活火山の約7%が日本列島に集中していることなどを説明した。巽さんによると、火山の寿命は100万年であることが最近の研究で分かり、1万年のスケールでみていると火山が噴火するかしないか、はしっかり認識できないという。
「日本人は古来自然の恩恵を受けてきた一方で、大きな自然災害に見舞われる宿命にあった。そうした経験の中から日本人特有の災害観ができたが、災害に取り組む上ではじゃまをしてきた」と巽さん。話はそこから日本人の災害観に及んだ。飛鳥時代に仏教が伝来し、仏教の「諸行無常」という命題が、自然災害の多発に悩まされてきた日本人の「つぼ」にはまった。その無常観はその後の大災害経験を経て「詠嘆的な無常観」になっていく。そうした感情が日本人の根っこに刻まれていった。そしてそれは「方丈記」の中の嘆きの表現に読み取ることができるが、その後の「徒然草」になると、その無常観がさらに美意識に昇華していった—。
「それは刹那的な享楽主義だったかもしれないが、災害に対して無力さを認めてしまった。日本人の災害倫理観はこの時代に確立してしまった」「別の表現をすると自然災害に立ち向かうことを諦めてしまっている」「欧米は日本のように自然災害は多くないが、神から自然を支配することを託されているという自然観がある。自然を支配することが自分たちの仕事だと理解する。そういう考え方で自然と対峙(たいじ)してきた」。日本人の自然観、宗教観、倫理観に根ざした巽さんの話に会場の多くの参加者が真剣に、耳を傾けていた。
続いて地震の発生確率の話に移った。「南海トラフ巨大地震の確率は30年以内に少なく見積もっても70%」。2020年の東京五輪、25年の大阪万博にも触れ「決して反対している訳ではないがそういうところで開催することを忘れると怖い。大きなイベントをするという高揚感だけでは地震から逃れることはできない。地震や津波や火山噴火の対策はきちんとすべきだ」。
巨大カルデラ噴火について、巽さんは「過去300万年に日本列島に起きてきたことはこれからも起きる」と指摘し、日本人が経験した約7300万年前の鬼界カルデラ噴火の説明に入った。過去12万年だけをみても11回巨大カルデラ噴火が起きていることを指摘し、「この事実は今後100年に1%の確率で巨大な噴火が起きることを意味する」。巽さんはこの1%の持つ意味が99%大丈夫であることを意味しないことを強調。そう指摘する理由として「神戸大震災を起こした兵庫県南部地震の前日の(同一地震の)発生確率は1%だった」と説明している。
「無常観に変わる倫理観を」「諦念、諦めではない覚悟を」
巽さんの基調講演も終盤に入った。巨大カルデラ噴火による火山灰の甚大被害について「ライフラインは完全に止まって『日本喪失』ということになる」。そうした巨大噴火のリスクについて巽さんは「危険値」という概念を紹介。「危険値は想定死亡者に発生確率を掛けたもの」。交通事故と巨大カルデラ噴火の危険値は実は同じだという。巨大カルデラ噴火についてはほとんどの日本人が(起こり得る)自然災害との認識を持っていない。それに対してどうしたらいいか—。「残念ながら私も解を持ち合わせていない。だがこれから私たちは長期ビジョンを持って、無常観に変わる倫理観で対応しなければならない。私たちはそういうところに住んでいるという覚悟をも持たなければならない。そういう覚悟は諦念、諦めではない。それらによって自然災害に立ち向かうことが必要だと思う」。
重く、強烈な警告だった。
会場が「重い気分になってしまいましたが」。寺田さんの率直なコメントの進行で次に話題提供の部に移った。
その一番手は大阪府都市整備部・河川室河川整備課参事の川上卓さんで、タイトルは「大阪の高潮防御施設操作のタイムライン」。川上さんは大阪府に入庁した後、主に府内の河川の治水計画立案を担当。2018年から河川室河川整備参事になり、台風21号の防災対応をした。
台風21号は、大阪府内で最大瞬間風速58.1メートルを記録し、暴風で住宅の屋根が吹き飛んだりして近畿地方を中心に死者も出す大きな被害に見舞われた。関西国際空港では、高潮により滑走路が浸水、タンカーが連絡橋に衝突して橋は中破。空港は一時孤立した。
「大阪は低地で水(災害)に苦しめられてきた地域でもあります」。川上さんは高潮対策を中心に台風21号到来時の対応策を当時の動画を映しながら説明した。大阪は過去大きな高潮被害にあっている。高潮対策は防災上重要だった。最高潮位対策は、台風到来の2日前に行われた気象台による台風説明会を受けて決められた。そこでは水門閉鎖などの具体的な対策が決められたという。そして甚大な浸水被害は免れた。
「水門や防潮堤の整備や点検にお金をかけてきたが、今回有効に活用できた。何兆円もの経済被害を防ぐことができた」と川上さん。その一方で「当時は(高潮対策上)危ない状況だった」とも述べて「備え」の大切さを強調している。川上さんは災害に関するリスク情報の提供や水害対応のタイムラインの構築にも携わっており、住民に対する情報提供の大切さを強調して話を終えた。寺田さんは「メディアでは被害が大きく伝えられるが嵐の中で水門を閉じた人がいたことを知って感動し、川上さんにお話をお願いした」と話題提供者選びの裏話を披露した。
大阪・中之島地区でエリア防災に取り組む
次は「中之島まちみらい協議会」代表幹事の岸田文夫さんが「大阪都心ビジネス地区中之島でのエリア防災備災の取組み」として話題提供した。岸田さんは竹中工務店に入社後、都市計画コンサルタントへの出向も経験し、東日本大震災後に被災地に度々出向いている。2016年から同社開発計画本部長のかたわら、中之島まちみらい協議会の代表幹事として中之島地区の防災にも取り組んでいる。
岸田さんは大阪生まれの大阪育ち。江戸時代の大阪の地図をスクリーンに映しながら「中之島地区も昔は海だった」と紹介。岸田さんによると、大阪は明治時代以降南北方向を軸として街づくりが進んできたが、今後は東西を軸とした開発に移るために中之島地区が重要な位置を占めている。「都市再生緊急整備地区」に指定されたことから、この地区の再開発が本格的に始まり、2004年に「中之島まちみらい協議会」が発足。現在地区内の企業など28社で構成されている。協議会の活動目的は、官民が協力して地域内の都市ビジョンの検討や地区の活性化のためのタウンマネージメントの在り方の検討などだが、この中でも防災対策は重要な柱だという。
岸田さんらは、国の「都市再生安全確保計画」に基づいて7年ほど前から「エリア防災」の活動に取り組んでいる。活断層型地震や南海トラフ巨大地震を想定してエリア防災計画も策定している。具体的には帰宅困難者対策や専門家を呼んだワークショップ・勉強会といった防災意識啓発活動のほか、防災訓練などだ。中之島地区は地域内の一時避難場所でもあり、周辺から多くの人が集まることも想定して安全確保計画をつくっているという。
大地震が実際に起きると企業関係者は自分の会社の管理などの対応に手が取られる。このため協議会の災害対策本部をWEB上に構築することや、地域内の住民との連携、外国人観光客対策など今後詰めなければいかない課題もある—。岸田さんはこう指摘して話を終えた。
最後に話題提供したのは大阪大学大学院人間科学研究科教授の稲場圭信さんだ。タイトルは「災害時の支え合い:国際・多文化共生×地域資源(寺社・自治会)×アプリ」。稲場さんの専門は共生学、宗教社会学などで、東日本大震災の被災地や被災地の寺社も巡回。被災者の救済や災害復興における宗教の果たす役割について実践的な研究を続けている。
宗教関係者や宗教施設が果たす役割は大きい
東日本大震災では2万人近くの老若男女が犠牲になった。突然、親や子、兄弟、親戚、恋人・友人・知人らを奪われた。その哀しみを数字にすることはできない。大震災の現場は当時、修羅場であり、大震災は「無慈悲」で「不条理」であった。大震災の直後から宗教の果たす役割は大きかった。見つかった遺体があまり多いために、葬儀する間もなく火葬されたり、火葬が間に合わずに土葬にされた。次々と遺体が運ばれる安置所では宗派を問わず読経する僧侶の姿があった。「お坊さんの読経を聞いただけでも少しだけ救われた」。当時のメディアは家族を失った被災者のコメントをこう伝えた。僧侶ら宗教関係者が被災者の心のケアに果たした役割は大きかった。
「震災復興と宗教」「防災と宗教」というテーマに取り組んでいる稲場さんは産官学連携で「大阪大学オムニサイト」を立ち上げた。そして「共生」をキーワードに新たなコミュニティの在り方を学生とともに研究している。そのかたわら、被災地支援の活動も行い、ごく最近、岡山県・真備町の仮設団地で学生と炊き出しをしてきたという。稲場さんによると、東日本大震災で100以上のお寺・神社が緊急避難場所になった。お寺や神社は高台にある場合が多く、多くの人が自主的に避難し、そのまま緊急避難場所になったという。
稲場さんの説明では、日本には18万以上の寺社などの宗教施設があり、大きな災害時に300〜400人が避難生活を送った施設もある。宗教施設は避難所にもなる「地域資源」として見直されており、東京・浅草の浅草寺は帰宅困難者対策として非常用発電機を台東区の予算で設置している。全国調査の結果によると、2400以上の宗教施設が何らかの形で300を超える自治体と災害時の協力関係を築いている。中には「3.11」以前から指定避難所になっていたり、耐震構造にして災害拠点になっている寺もあるという。
稲場さんは「せっかく寺社などがそうした役割を担いつつあり、寺社の近くに災害被害を示す碑などがあっても、災害の伝承が必ずしもなされていないことが問題だ」と言う。碑があって防災教育で教えられていても災害時に逃げていないケースがあり、防災教育をしても子ども達が(こうした碑の意味を知るなどして被災した)現場を見ることが大切だ、という。
行政が地域資源としての宗教施設や自治会とどのように連携するか、外国の人も増えるので(防災上)どう多言語化対応するか、科学技術を使った(防災上の)システムをどうつくっていくか。稲場さんは、防災、備災のために「産官学」がネットワークで連携してできる課題は多い、と強調して話題提供を終えた。
「自然災害の被害を防ぐための戦いがある」
休憩を挟んで「都市防災備災の産官学ネットワークの共創」をテーマにディスカッションが始まった。登壇者は基調講演、話題提供をした4人にモデレーター役の大阪大学共創機構社学共創本部の准教授・木ノ下智恵子さんが加わった。アートプロデューサーでもある木ノ下さんは2017年10月に神戸市で開かれた「サイエンスアゴラ in KOBE」で総合司会を務めている。
木ノ下さんが、これまでの基調講演や話題提供についての感想を4人の登壇者にたずねた。川上さんは「自然災害に対して我々技術者が立ち向かい、被害を防ぐための戦いがあると思った。一方ハード(施設)によって被害を減らすことができると。中之島地区のように地域レベルで防災を進めていく大切さを感じた」。岸田さんは「我々はしっかりした(耐震の)ビルを持ってるし、自助はふだんからお金も掛けてやっているが、隣近所も助け合う共助をどう進めてるかも考えている。近所同士が助け合うだけでなく、もし企業と住民の間に断絶みたいなものがあるならば、それをなくしていくことも大切だと思う」。
稲場さんは「東日本大震災では、ほとんどのお寺が避難住民を受け入れたが、中にはそうしなかったところもあって、いつも思いやりとか支え合いとかを説いていたお寺なのに、と非難を浴びた。(首都圏の)帰宅困難者の受け入れをしなかった、と企業や一部の高層マンションが同じような批判を浴びた。企業も日ごろから地域住民とのつながりをもっていることが大切だ」と指摘している。
巽さんは「多くの人が考える自然災害のスケールは百年、2百年だが、それではこれまで繰り返されてきた(巨大災害)被害を防ぐことは難しい」と強調した。これを受けて川上さんは「(甚大被害が想定されている)南海トラフ巨大地震の被害予測が出て人々も少しは(長い時間スケールで)考えられるようになったと思う。今回台風の話をしたが、気象予測も精度も上がってきていて、時間と行動の余裕を少し持てる場合もあるようになった。一方、地震は突然起きるので、地震が身近で起きることを一人一人がしっかり考えることも必要だ」と述べた。
稲場さんは、大阪大学の「未来共生プログラム」の一環として、全国の避難所や寺社・教会といった宗教施設のデータ約30万件を集積した災害救援マップ(災救マップ)をつくっている。このマップは「アプリ」としてスマートフォンにダウンロードして災害時に活用できる。「何百年も地域に根付いたお寺や神社もあるが、(何百年より)長い時間スケールで起きる大災害についてどう考えたらいいかの問題は難しい。巽先生のお話の中で無常観や諦念観の話があった。それらは自然に対してだけではなく、我々の命に対しても言える。諦めではなく、今生きている命を尊び、次に生まれてくる命も考えることが大切だと思う。教育も重要だ」と稲場さん。
岸田さんは「情報が集まった時に実際にどう動けるか(が問題)だ」と述べ、実際に災害が起きたときの対応の難しさを指摘しながら、一般論ではない、実際に機能する避難計画などの重要性を説いている。
川上さんや稲場さんは、小中学生の時からの防災教育の大切さを強調した。「総合学習などでボランティア活動を経験してもらい、実際に被災地などにいくことも大切だ」「社会活動を解決するために社会実装するのは容易ではない。データや技術があっても社会実装されるためには、社会全体に共通の理解や価値観がないとだめだ」「防災については、日ごろの備えが非常に大事という(言わば)『共通価値の創出』を浸透させていくことが求められる」。
岸田さんは、企業の中期計画の多くは3年単位であることを挙げて企業が長い時間スケールで対応することや時間軸を乗り越えて大災害に備えることが実際には難しい、という苦労話も吐露してくれた。
命を守る取り組みを身近なところから
活断層型地震も海溝型地震も「30年以内に起きる発生確率」が公表されている。巽さんは「私には可愛い女の子の孫がいるが、(しばらく何も起きないと)彼女が大きくなった時により確率が高くなる。我々に(今)何ができるか、しっかり考えることが共通の認識だと思う」。巽さんの話を受けて稲場さんは「誰にでも家族、友達など大切な人がいる。その家族や友人にもまた大切な人がいる。命を育み、命を大切にして、命を守る取り組みは、身近なところから始めることが重要だ。そうしたことが国内で増えている外国人に対する(外国人の命も大切にする)意識にもつながっていく」と稲場さん。
木ノ下さんが「最後にひと言ずつ」と4人にたずねた。川上さんは「少しでも減災するための情報発信の在り方やツールの開発を産官学で考えていきたい」。岸田さんは「行政が地域防災の取り組みをしているが、地域で働く人にまで手が回らないところがある。そこを企業が官民連携でしっかりやっていきたい」。稲場さんは「最近の若者、学生は元気がないと言われるが、地に足が付いてしっかり世の中の事、自分の事、周囲の事を考えている学生は多い。安心安全の社会づくり、共生社会づくりを考えている学生も多い。ただ彼らは社会経験がない。企業や行政、地域の人たちとの連携の場があれば、そこで若い人も加わって(防災備災のための)新たな連携ができる」。
日本では日ごろから「地震大国」「火山大国」「自然大国」と言われているが、自分自身が災害被害に遭うと「まさか自分が被害にあうとは思っていなかった」と述懐する。「自然災害はこれから増えていくだろう。災害が起きたらしょうがない、と考えないで我々の次世代のことも考えていければと思う」。巽さんが最後にこうコメントした。
「我々は世界一の災害大国に住んでいるということをしっかり頭に叩き込み、私たち一人一人に何ができるかを考えながら産官学の未来や共創に向けて努力していきたい」。木ノ下さんがこう締めくくって「アゴラin大阪」が終了した。避けることができない自然災害も多い。だが、この日に会場に足を運んだ多くの参加者が「防災備災」のために「何かをする」ための「元気」や「エネルギー」をもらったようだ。
(サイエンスポータル編集長 内城喜貴)
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