レポート - 研究所レポート -

日本最大のバイオメディカルクラスターをご存知ですか?(№2)

先端医療振興財団 調査役 中島佳子

掲載日:2012年1月12日

2012年、皆様は、どのようなスタートをされましたでしょうか?
今年のNew Year's Resolution、あるいは、New Year's Intention(*1)はいかに?

さて、前回、「日本最大のバイオメディカルクラスターをご存知ですか?(№1)」 では、「神戸医療産業都市」は、阪神・淡路大震災の復興プロジェクト(*2)として始まったことをお話しました。

今回は、構想が始まった当時、‘文字通り’何もなかった人工島の荒地に、その後、どのように施設が展開されていって、現在はどのような構成となっているのか、中核となる研究機関、施設を中心に、少しご紹介をしていきたいと思います(*3)。まずは、先端医療振興財団からです。


(1) 先端医療振興財団


2000年3月に、「神戸医療産業都市」の中核支援機関、中核研究機関として設立され、「医療機器の開発」、「医薬品等の開発」、「再生医療等の臨床応用」の3つの分野において、「基礎研究を実用化につないでいくための研究開発、臨床研究支援、実用化支援などを行う」ことをミッションとしています。

ポートアイランドでの実際の事業開始は2002年1月からで、先端医療センターの全面開業は2003年3月でした。 理事長は、2004年から井村裕夫先生が務められおり、‘先端医療振興財団?それなあに?’という方でも、‘井村裕夫先生の財団’といえば、‘ああ、あれね!’とピンと来る方も少なくないようです。

2012年1月現在、財団は、「先端医療センター病院」、「先端医療センター研究所部門」、「臨床研究情報センター」、そして、「クラスター推進センター」という4つのセンターから構成されています。各センターの詳細は、上記URLよりご参照いただけますが、その概略と、最近の取り組みのいくつかをご紹介しておきますと・・・

IBRI南正面 IBRI北面
駐車場を挟んで、中央市民病院があります。


◆ 先端医療センター(IBRI)病院 ◆


現在の標準的な医療では対応困難な病気を克服するため、高度専門医療に取り組む 計60床(無菌室4床、準無菌室15床を含む)の病院です。

2011年12月より、呼吸により移動するがん病巣を追尾しながらピンポイントで放射線照射を行う『肺がんの動体追尾治療』 を開始。また、再生医療領域では、2011年10月より、鼓膜穿(せん)孔の患者さんを対象に線維芽細胞増殖因子を浸潤させた生体吸収性材料を用いた『新しい鼓膜再生療法』の臨床試験を開始しているほか、自己骨髄単核球細胞を用いた新しい『脳梗塞後の血管再生と神経再生を促す』臨床試験も開始されます。

  http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0004687669.shtml
  http://www.ibri-kobe.org/pressrelease/pdf/press4d.pdf

◆ 先端医療センター(IBRI)研究部門 ◆


現在は、再生医療研究開発、映像医療研究開発、医薬品開発・支援の3つの部門から構成されています。
    『再生医療研究開発部門』

    いろいろな再生医療研究を行っていますが、中でも、理化学研究所 発生再生科学総合センター(CDB)と協力して進められている網膜再生医療研究は、現在、臨床に一番近いと見られている「ヒトiPS細胞を用いる再生医療研究」です。 「ヒトiPS細胞」から網膜色素上皮細胞を作製し、網膜色素変性症の患者さんに移植しようとするものですが、臨床応用可能な品質の細胞を得るべく鋭意多角的な研究が進められています。

    『映像医療研究開発部門』

    「分子イメージング研究グループ」では、PET(*4)を用いたアルツハイマー病やがんの診断、治療のための臨床研究と医薬品・診断薬開発の研究を行っています。昨年末には、国内最高水準の『治験薬GMP対応ホットラボ施設』(*5、*6)を新設。2012年1月より、企業のPET治療薬の製造受託を開始しました。これは、創薬手法が変わりつつある現在にあって、映像医療(*7)でも特にPET研究に力を入れてきた当グループの強みを活かし、PET治験ラグのために日本での医薬品開発に遅れが生じることがないようにしようとする新たな取り組みです。

      http://www.ibri-kobe.org/magazine/pdf/ph_pet/Ph-PET%20Letter%20No%2042.pdf

    また、「放射線治療研究グループ」では、患者さんに大きな負担をかけることなく、がん治療に威力を発揮する放射線治療装置の研究開発を企業などと共同して行っています。この共同研究の中で開発された高精度放射線治療装置MHI-TM2000(写真は財団ホームページから)は、米食品医薬品局(FDA)の認可、厚生労働省か薬事法に基づく製造販売承認を受け、発売されています。

      http://www.ibri-kobe.org/laboratory/research/lab09/01.html

    『医薬品開発・支援部門』

    鍋島陽一先端医療センター長のもと、2010年から新たに設置された部門です。高齢化社会において、精神的にも肉体的にも健康を保持し、生産的な生活を送ることを可能にする「Productive Aging(健康老化)の実現」を目指して、クロトー遺伝子(*8)群の研究、アルツハイマー病の治療法の研究などを進めています。 鍋島先生の夢は、自らの研究グループからの創薬を通じて、社会に貢献するとともに、神戸クラスターが名実ともに世界有数のバイオメディカルクラスターとなることだとか。

      http://www.ibri-kobe.org/laboratory/research/lab10/


◆ 臨床研究情報センター(TRI) ◆



トランスレーショナルリサーチを推進するための情報拠点として、2003年にわが国で初めて整備されたセンターです。がん、再生医療領域を中心に、臨床研究や医師主導治験の支援を行っているほか、米国立がん研究所(NCI)が配信するPDQ(Physician Data Query)の日本語版を翻訳し、常時更新リリースをしています。また、全米を代表とする21のがんセンターで構成される組織NCCN(National Comprehensive Cancer Network)策定のがん治療についてのNCCNガイドラインの日本語版をコメント付で公開するなど、積極的に情報発信活動を行っています。

  http://www.tri-kobe.org/


以上の3センターが研究、研究支援を行っているのに対して、『クラスター推進センター(PCK)』は、関西広域の産学官連携事業や、国際連携、進出企業支援などを行う、神戸クラスター形成促進のための中核支援機関としての機能を担ってきました。

TRI 施設配置マップ
TRI 施設配置マップ
拡大してご覧ください。


*1:  New Year's Resolutionが、「こういうことをする」という新年の誓い(決意)であるのに対して、
New Year’s Intentionの方は、「自分はこうなっていたい」というポジティブな目標、方向性の設定(心構え)
を示しているようです。
New Year's Resolutionは、8割の人が達成できずに失敗するとの統計があるの対して、New Year's Intention の方は、心構えですから、失敗のしようがないという点で、ストレスがかかりにくいという利点があるともされているようです。
  http://www.usatoday.com/money/smallbusiness/columnist/abrams/2010-12-30-new-year-intentions_N.htm
  http://www.selfgrowth.com/articles/Noyes7.html
*2:  この1月17日、神戸は大震災から17年目を迎えます。長い年月だったのか、あっという間だったのか。
*3:  中核施設、研究機関の位置関係につきましては、http://www.kobe-lsc.jp/ あるいは、上記の添付マップを拡大してご参照ください。
*4:  PET:positron emission tomography。陽電子放出断層撮影。
*5:  GMP:good manufacturing practice。 医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準。
*6:  hot laboratoryのこと。PET薬剤の合成等を行う施設。
*7:  映像医療とは、PETやMRI、X線 CTなどの画像診断法を用いて病気の診断、病態生理研究および治療効果の評価を行うこと。
*8:  Klotho遺伝子とは、鍋島先生らが発見された老化抑制遺伝子の一つです。


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