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産学連携やはり簡単には進まない?

掲載日:2015年12月4日

大学と企業の共同研究と企業から大学への研究資金の支出額は、2004年の国立大学法人化以降、年々増加傾向にある。しかし、2014年度に企業からの支出金が1,000万円を超える大型共同研究は、わずか4.2%でしかない...。そんな現状が、2日公表された科学技術・学術政策研究所の調査報告書「大型産学連携のマネジメントに係る調査研究」で明らかにされた。

「まだ産学連携は本格段階に至っていない。これは、わが国の企業にとって、イノベーションの創出の方法論として産学連携が十分に活用されておらず、企業が積極的に活用を行わない何らかの阻害要因が存在すると考えられる」。報告書は冒頭から、厳しい記述が目を引く。

急速に変化する社会情勢に企業が対応するにはオープンイノベーションが喫緊の課題となっている。社会に大きなインパクトを与えるような技術を生み出すには、一定以上の研究開発規模が必要...。今回の調査の目的と背景には、日本の企業が直面しているこうした現実がある、と報告書から読み取れる。調査は、特許出願数を指標に同研究所がつくった「企業名辞書」に掲載されている5,761社を対象に、直近3年間の産学連携実施状況を調べた(解析可能な回答を寄せたのは571社)。

企業から大学が受け入れた金額が1億円を超える共同研究の件数は、全体の0.1%。5,000万円以上1億円未満が0.2%、1,000万円以上5,000万円未満が3.9%で、結局1,000万円を超す共同研究件数は全体の4.2%でしかないという結果だった。

では、そもそも企業は大学との共同研究と社内での研究開発との役割の違いをどのように見ているのか。「産学共同研究とテーマ的に連動し、より開発寄りの社内研究開発を同時並行で実施」を挙げた割合が最も高く、次いで「産学共同研究に参画した社内研究員の基礎研究理解力が向上」、「産学共同研究終了後にその成果を継承・発展させるための社内研究開発を実施」の割合が高い。

こうした結果から、企業は社内研究との連動性を重視しており、社会実装に向けて基礎研究と開発とが双方向に刺激し合うような研究開発の意識を有する傾向がある、との見方を報告書は示している。ただし、大学との共同研究で予想もしなかったような画期的成果が得られることまでは、あまり期待していないということだろう。

「外部と連携せずに自社で研究開発を行う技術」とは何かを聞いた問いに対する答えは、「同業他社と自社を差別化するための技術」が6割を占めた。「現状の企業の意識として、異分野融合など新たな価値を創出する複数企業参画の大型産学連携における協調の困難性を示している」というのが報告書の解釈だ。

大学と知的所有権を共有することの懸念が企業に強い、という結果も示されている。実際に大型の産学共同研究を実施している企業の回答を見ると「自社単独開発であればノウハウとして保護可能な技術が、大学では学会などで発表されてしまう」という懸念に加え、「共同特許出願した場合、大学持ち分の特許出願費用負担を要求される」、「特許出願にかかる技術のランニングロイヤルティの支払い契約」の割合が高い。

こうした調査結果から報告書は、企業がノウハウ漏えいに懸念を抱かないような組織体制整備を大学に望む一方、企業にも注文をつけている。「近年、研究データのオープンアクセスの潮流があるように、企業も大学の研究成果の公表促進が、より多くの情報にアクセスできる機会に資することへの理解が期待される」と。しかし、これは多くの企業にとってなかなか対応が難しい要請ということではないだろうか。

3日、科学技術振興機構で米情報サービス企業のトムソン・ロイター社から、濵口道成(はまぐち みちなり)理事長に「Top100グローバル・イノベータ2015」の受賞を記念するトロフィーが贈られた。過去3年間あるいは5年間に得た特許数とそれらの特許の影響力など特許を指標に最もイノベーティブと同社が評価した世界100企業・機関の一つに、科学技術振興機構が選ばれたからだ。同機構以外に日本から企業39社が選ばれ、2年連続で日本が選出企業・機関が最も多い国となった。

濵口理事長は、同じ3日に開かれた記者説明会で、イノベーションを創造するために産学官のオープンなプラットフォームを構築する必要を強調している。人や組織を相互につなぐネットワーキング機能を最大限に生かす必要がある、という主張だ。「イノベーションは境界、辺境からしか生まれない」との信念にも基づく。同時に濵口氏は、産学官連携が重要であるにもかかわらず特に産業界と大学の人の交流が非常に少ない現実も認めている。

大学と企業の共同研究促進は、策定作業が煮詰まっている第5期科学技術基本計画の柱の一つにもなっている。国立大学に対する運営費交付金や私立大学等経常費補助金などの基盤的経費を増やすことが難しくなっている財政事情が背景にある。計画の最終年度である2020年度までの5年間で、企業との共同研究で大学が企業から受け入れる研究開発費を現状より5割増やす数値目標が盛り込まれる見通しだ。

ただし産学連携の推進は一筋縄ではいかない、ということだろうか。科学技術・学術政策研究所の報告書を見ても...。

(小岩井忠道)

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