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難しくなる一方の科学技術未来予測

2012.10.31

 科学技術は、専門家の予測通りに発展も実現もしにくくなっているという報告書を、科学技術政策研究所が公表した。

 同研究所が40年前から実施している「デルファイ調査」は、専門家に対する反復アンケートによって未来を予測する有力な方法とされている。過去の調査結果の分析から、新しい調査になるほど、専門家が予想した通りに科学技術が進展することが少なくなり、将来見通しにばらつきも見られることがはっきりしたという。

 1971年から1992年の調査結果から、予測が20年後に完全に実現した割合をみると、71年が23%実現したのに対し、77年は17%、82年は17%、87年は14%、92年は8%と実現率が減り続けている。「技術や社会の変化について中長期の将来を見通すことが難しくなった」というのが、報告書の見立てだ。

 2011年度から5年間を見通した「第4期科学技術基本計画」は「国として取り組むべき重要課題を設定し、その達成に向けた施策を重点的に推進する」ことを基本方針に掲げている。

 重要課題の設定においては、社会が何を必要としているかに加えて実現可能性の見通しも重要だが、こうした予測自体が容易ではなくなりつつあるということだろう。

 報告書は、「将来社会の方向も明示的に含め、現在思い描くことのできる範囲を超えて、ある程度の大胆さを持った想定を検討の選択肢にあえて加える」「人文・社会科学の専門家をより適切な形で取り込んで共同作業として検討を行う」ことが重要だ、と指摘しているのだが…。

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