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畑村事故調査・検証委員会委員長の姿勢

掲載日:2011年6月23日

畑村洋一郎・事故調査・検証委員会委員長が22日、日本記者クラブで講演し、福島第一原子力発電所事故調査の進め方などについて語った。

事故調査・検証委員会が発足し最初の会合を開いたのは6月7日で、早速17日には10人の委員の半数が福島第一、第二原子力発電所を日帰りで視察している。

この日の講演で畑村氏は、「事故から3カ月近くたって事故調査・検証委員会をつくるのは、日本という国の信用にかかわること。知りたい時に知りたいことが出てくる文化をつくる必要がある。本来、委員会は事故の1週間か10日後には発足していなければならなかった」と政府に苦言を呈しつつ、「100年後の評価に耐えられるような調査を行いたい」と強い意欲を示した。

「再現実験」と「動態保存」の二つを重視すると語っているのが興味深い。校舎屋上の天窓が破れて児童・生徒が落下する事故が相次いだ例を挙げて、「トランポリンのような遊びができる場所になっていた実態がある。こうしたことは再現実験をしないと見落してしまい、天窓の周囲に柵をつければよいといった不十分な対策で終わってしまう」と、事故調査・検証における再現実験の大切さを指摘した。

もう一つの「動態保存」については、日航機墜落事故(1985年)の例を引いている。発端となった後部圧力隔壁が破壊された姿のまま現在でも保存、展示されている事実を挙げて、その重要性を強調した。調査・検証結果を書面や映像などで記録し、後世に伝えようとしても真実は伝わらない。破壊され、外部に甚大な影響を与えた実物を事故時の状態で保存することによって、後世の人々がその前に立った時、一目で感じ取れるようにすることが大事、という。

委員会自体の議論内容はホームページ上で公開していくほか、次回2回目の委員会から「できれば英語の同時通訳を入れて他国の人たちにも議論している内容が分かってもらうようにしたい」とも語った。

こうした考えにたって調査を進め、12月末に中間報告、来年夏ごろまでに最終報告を、というスケジュールを示している。同時に「福島第一原発の状況が収まらないと委員会の活動も終了できない。来年夏までに最終報告を出して委員会も任務終了となるかどうかは分からない」とも語り、原子炉と使用済み燃料プールの安定的冷却状態を確立し、放射性物質の放出を抑制するという事故収束の見通しについては楽観視していないこともうかがわせた。

一方、現実的な対応を同時に重視していることを示す発言も目立った。海外との文化の違いに何度か触れている。例えば大企業の社長でも議会の公聴会に呼び出され、議員から厳しい質問を浴びせられる米国のようにはいかないということを指摘している。できるだけ多くの関係者から事情聴取すると明言したものの、内容がそのまま公表されると正直に話せないという関係者がいることを想定し、自治体首長、政治家、産業界のトップなど自分の主張を他の人にも知ってもらいたいという人にのみ、了解を得て話した内容を公表する考えを示した。

現在の委員会メンバーの構成は、原子力にかかわったことがある人ははずしている。調査・検証結果が信用されないことを恐れてのことだが、これについても畑村氏は「原子力を本当に知らない委員ばかりでは無理。調査・検証作業の途中から原子力を知っている人にも入ってもらう」との考えを明らかにした。

畑村氏の発言でもう一つ興味深いものがある。「津波対策で高所移転を言うのはよいが、いつか必ず崩れて海の近くに住む人たちが出てくることを想定した復興計画をつくる必要がある」というものだ。こちらは事故調査・検証委員会だけでなく、東日本大震災復興構想会議の議論にも適用されるべき考え方のように見える。

【この記事へ読者コメント】
現在のわが国の原発の状況と増え続ける使用済核燃料の問題
投稿者:ryo_suzuki 2011年7月8日掲載

原子力発電は、ウラン235を燃料とするものと、使用済み燃料を再処理してウラン235とプルトニウム239とを混合したMOX燃料を使用するプルサーマル方式がある。いずれも核分裂によって発生する熱エネルギーを利用した発電方式である。日本国内で利用されているシステムは、原子炉内で直接水を沸騰させ蒸気タービンを回す『沸騰水型軽水炉』(東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力の原子力発電所がこのタイプ)と、高い圧力をかけ水を沸騰させずに高温のまま循環させ、熱交換器を介して別系統の水を加熱して蒸気を発生させ、タービンを回す『加圧水型軽水炉』(北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力、日本原子力発電がこのタイプ)とがある。

『プルサーマル発電』は、九州電力 玄海原子力発電所3号機(2009年12月2日)、四国電力 伊方原子力発電所3号機(2010年3月30日)、東京電力 福島第一原子力発電所3号機(2010年10月26日)、関西電力 高浜原子力発電所3号機(2011年1月21日)の4基が営業運転を開始していた。事故を起こした福島以外は今も稼働している。この他にも中部電力 浜岡4号機、関西電力 高浜4号機、中国電力 島根2号機、北海道電力 泊3号機、東北電力 女川3号機が導入予定である。MOX燃料はまだ国内では加工できずフランスに加工委託しており、『国内の加工施設は六ヶ所村に建設中』(昨年着工)でH28年創業予定である。

更に、福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構のナトリウム冷却高速中性子型増殖炉「もんじゅ」は、MOX燃料を使用して消費量以上の燃料を生み出す『高速増殖炉』である。「もんじゅ」は試験運転開始後程なくしてナトリウム漏れを起こす重大な事故が発生し、その後改修して運転再開したが機器の誤作動、その後炉心に燃料昇降装置が落下するなどの問題が発生し、その引き上げには成功したが、現在は長期の運転休止状態にある。その他にも非常用ディーゼル発電機の故障も発生しており、全く使い物にならない状態である。

原発をどうするかは、増え続ける使用済み核燃料の処理をどうするかの問題でもある。六ヶ所村施設内の使用済核燃料の現在蓄積量は3,000トン、その他に各原発の使用済核燃料プールに蓄積されている量は合計13,530トンにも上る、経産省(2010年9月末)の調べでは国内に総計16,500トン以上の使用済核燃料が蓄積されていることになる。そして、原発を継続的に稼働させれば、毎年新たに800~1,000トンが発生する。ところが、新設予定の六ヶ所村施設の処理能力は800トン/年で、東海村の処理能力と合わせても全く能力不足の上、トラブルが相次ぎ、未だ完成にも至っていない。そして、再処理の際に海や大気中に大量の放射性物質を放出することが明らかになっており、最終処分地も決まっていない。

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、5/10現在、定期検査の終了予定を過ぎてもなお、営業運転再開を延期している原発が7基にのぼっている。安全対策や地元の理解が求められているためだ。今夏までに6基が定期検査に入る。再開できなければ国内の商用原子炉54基のうち、停止要請を受けた浜岡原発をはじめ42基が止まる事態になり得るという。これは火力や水力も含めた全電源の約2割に相当するようである。しかし、これには一般企業が有する自家用発電能力や電力会社が保有する揚水発電が含まれておらず、危機的な電力不足に陥る心配はない。

この状況を踏まえ、原発事故調査・検証委員会には第3者機関としての立場を明確にした上で、今回の原発事故の枠を超え、原子力の平和利用全体を通し、それを支える技術、人的制御の可否、使用済み核燃料の最終処分、人に与える健康被害、地球環境汚染をも含めたシステム全体の健全性を考慮したうえで、「本質安全」、「本質危険」の見極め国民にその全容を公表して頂きたい。

 
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