レビュー

日本学術会議憲章とは

2007.10.22

 10〜12日に開かれた日本学術会議総会で「日本学術会議憲章」の草案が提案された。日本学術会議のホームページには、「日本学術会議の目標、責任及び義務を明確にした『日本学術会議憲章』草案等について議論が行われた」という以上の詳しい報告が見あたらないので、19日付「科学新聞」の記事から、狙いや内容を推し量ってみる。

憲章をなぜ作成する必要があるのか。その提案理由については、2つの理由が挙げられている。

 一つは「学術会議の新生組織の目標・責任および義務を明確にする文書を作成・公表する必要性が指摘されていたが、この課題は残されたままであった」。もう一つは「先に公表された『科学者の行動規範だけでは、学術会議の対外的な誓約としては消極的に過ぎる」というものだ。昨年の総会で公表された「行動規範」が、「すべての科学者が自発的・自律的に遵守すべき倫理規律」とされているのに対し、「憲章」草案は、「学術会議のメンバーが共同で誓約すべき基本的な目標・義務・責任の宣言」という違いがある。また、「両者は補完的な役割を果たす」とされている。

 では、「行動規範」と、今回、提案された「憲章」草案とでは、どこがどう違っているのか。さらに、日本学術会議法で明記されている学術会議の目的、職務などに比べてどこが大きく踏み込んでいる個所なのだろうか。

 「行動規範」を読んでみると、「…努力する」、「…努める」、「…遵守する」、「…尊重する」、「…適切に対応する」といった記述が目立つ。このあたりが、「消極的に過ぎる」という評価につながったのだろうか。

 「憲章」草案は、確かに「…重要性を深く認識して行動する」、「…理性的な選択に寄与する」、「…に貢献する」、「…見識ある行動をとる義務と責任を引き受ける」、「…の遵守並びに義務と責任の誠実な実行を、社会に対して誓約する」という記述が並んでおり、より積極的な言い方になっているのが認められる。

 日本学術会議法で明記されている役割からどれだけ大きく踏み出しているかについては、科学新聞の記事からだけでは、よくわからない。

 新生日本学術会議が、その責任の重さの自覚と意欲をアピールするには、まず、憲章づくりの経過をもっと詳しく公表、説明することが必要ではないだろうか。仮に科学者に出来上がった憲章の意図するところが周知徹底されたとする。しかし、一般の国民がほとんど知らないというのでは、せっかく憲章をつくっても十分な効果が期待できないのではないだろうか。

ページトップへ