レビュー

待ったなし温暖化対策に残る課題

2007.04.09

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第2作業部会が、地球温暖化による影響をまとめた報告書を、6日採択、公表した。

 地球温暖化の進行を科学的に分析した第1作業部会の報告書(2月1日公表)以上に、各新聞が詳しく取り上げていた。

 「人類の想像力が問われる地球温暖化」(日経新聞7日)、「影響はもう世界中に及んでいる」(読売新聞8日)、「温暖化地獄を回避しよう」(産経新聞8日)、「プラス2度に抑えたい」(朝日新聞8日)というのが、各新聞の社説の見出しだ。表現はそれぞれだが、危機感がにじみ出ている。

 「温暖化が待ったなしの状況であることを示したといえよう」(日経)、「二酸化炭素の削減は待ったなしの状況だ」(産経)と、日経、産経2紙の社説がそろって「待ったなし」という表現を使っているのが目を引いた。

 では、温暖化対策のかぎとなる各国の足並みの方はどうか。各紙の記事、社説から、最大の懸案がまだ解決されていないことを、あらためて思い知らされる。

 「京都議定書から離れた米国にも動きがある。議会には、排出量取引制度の導入や大幅な排出削減を盛り込んだ法案が続々と提案され、来年の大統領選を機に積極的な対策に乗り出すのではないかとの観測もある」と、朝日7日朝刊総合面の記事にはある。

 温暖化対策に熱心に取り組む日本の関係者には、米国が近々、政策転換を打ち出すのでは、という期待が大きい。朝日の記事も、そのような見方を念頭に置いていると思われる。

 しかしながら、今回の第2作業部会の検討作業では、まだ米国側から明確な政策変更の兆しは見られなかったようだ。

 日経7日朝刊総合面のブリュッセル発記事は「欧州各国は具体的な予測数値を報告書に盛り込むよう主張。日本も欧州の立場を支持した。これに対し温暖化ガス排出の大幅削減を嫌がる米国や中国、ロシア、ブラジルが強硬に反発。6日未明には報告書の採択見送りという情報も流れた」と伝えている。

 読売7日朝刊2面のブリュッセル発記事も「採択が予定よりも半日以上もずれ込んだのは、温室効果ガスの排出量が最も多い米国、中国、サウジアラビアが報告書の文章や図表の表現を和らげるよう修正を求めたためだ」。東京新聞7日朝刊1面に載っているブリュッセル発共同通信記事も「具体的な影響予測の数値を盛り込んだ報告書案を支持する欧州諸国と、批判的な米国、中国などが対立して激しく紛糾。予測の年代や数値のほとんどが削除され、抽象的な表現にトーンダウンされた」と伝えている。

 米国は依然、抵抗勢力の立場を変えていないとしか、読めない。

 毎日7日朝刊2面の記事は、日経、読売と差がある。規制強化に抵抗した国として中国、インド、サウジアラビア、ロシア、ブラジルという国は挙げたが「米国は『報告書は科学的な根拠に基づくべきだ』との姿勢で静観した」と伝えているからだ。

 米政府が温暖化対策に相変わらず冷淡なのか、あるいは軟化の兆しがあるのか、各紙の記事、社説を読み比べただけでは、やや不透明なところがある。「確かなのは、京都議定書に縛られていない米国と中国が乗ってこない限り、温暖化防止の効果は期待できないということだ」(読売8日朝刊社説)ということだろう。(日経、読売、産経、朝日、毎日各紙の引用は東京版から)

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