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巨大津波起こしたプレート境界断層を掘削

2012.03.13

 東日本大震災の大津波を引き起こしたプレート境界断層の破壊メカニズムを探るため、地球深部探査船「ちきゅう」による海底掘削調査が4月1日から宮城県牡鹿半島沖合約220キロの日本海溝で行われる。

 調査は、日米が中心となっている統合国際深海掘削計画(IODP)の一環として実施される。水深約7,000メートルの日本海溝の中心部(海溝軸)から、海底下約1,000メートルのプレート境界断層まで掘り進む。地震発生からこれほど早期にプレート境界断層の摩擦特性を計測するのは世界初で、科学観測では世界最深の掘削調査となる。

 東北地方太平洋沖地震では、これまで地震学者たちが想定していた深さのプレート境界域だけでなく、より浅い海溝軸付近までプレート境界断層の破壊(滑り)が拡大した。浅い区域までの破壊拡大によって、検潮所で直接観測された値でも最大で10メートル近い巨大な津波が起きたとされている。実際に地震後に海洋研究開発機構が実施した反射法地震探査と測深器による海底地形調査結果から、日本海溝の海底が東南東方向に約50メートル、上方に約7-10メートル動いたことが確かめられた。

 断層が破壊した時の摩擦熱、断層帯の岩石の化学的性質、間隙率などプレート境界断層の摩擦特性を分析することで、巨大津波を発生させた海溝軸付近でのプレート境界断層の破壊メカニズムを明らかにしたい、と海洋研究開発機構は言っている。

 近い将来、発生が懸念されている南海−駿河トラフ沿いの海溝型地震でも、東海−東南海−南海の3連動巨大地震の可能性だけでなく、さらに海溝軸寄りのプレート境界断層が動く可能性があると警告する地震学者もいる。この場合、津波の大きさ、到達範囲も従来、想定されたものよりはるかに大きくなる、と指摘されている。

 「ちきゅう」には、共同首席研究者のジェームズ・モリ京都大学防災研究所教授ら10カ国28人の研究者が乗り込み、5月24日まで行われる。

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