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自己熱再生理論でバイオエタノールの省エネ生産実証

2012.02.06

 革命的な省エネを可能にするとされる「自己熱再生理論」で、バイオエタノール生産を大幅に省エネ化することが可能なことを、東京大学生産技術研究所と新日鉄エンジニアリングが実証実験で確認した。自己熱再生理論を実証した世界初の例、と開発チームは言っている。

 自己熱再生理論は、堤敦司・東京大学生産技術研究所教授が構築した。燃料を一切加熱することなく自己熱を循環利用することで、燃焼によって無駄になる大幅なエネルギー損失分が節約できるという考え方だ。計算では、蒸留、蒸発、濃縮、乾燥、反応、分離などほぼ全ての工程で、燃料を燃焼して利用する場合に比べ、エネルギー消費を5分の1から20分の1に大幅削減できる、とされている。

 堤氏ら東京大学生産技術研究所と新日鉄エンジニアリングは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「セルロース系エタノール革新的生産システム開発事業」で、新日鉄エンジニアリング北九州環境技術センター内に自己熱再生理論を適用したバイオエタノール蒸留プロセス実証実験装置をつくり、どれだけエネルギー消費量を節減できるか、確かめた。

 その結果、従来の蒸留プロセスに比べ消費するエネルギーを約85%削減できることが分かった。

 植物を原料とするバイオエタノールは、温暖化の原因となる二酸化炭素排出を抑えるエネルギー源として期待されている。トウモロコシを原料とするバイオエタノールは既にガソリンの代替商品として流通しているが、穀物価格の上昇を招くという新たな問題が生じている。食料生産と競合しない植物や間伐材などを原料とするセルロース系エタノール生産技術に期待が寄せられているが、最大のネックは経済性。この課題を解決するには生産工程でのエネルギー消費をいかに抑えるかが鍵になっている。

 国のバイオマス利用計画に沿った「セルロース系エタノール革新的生産システム開発事業」は、セルロース系バイオエタノールの生産費を1リットル当たり40円にする目標を掲げている。

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