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5年間で衛星34機打ち上げ 宇宙基本計画案まとまる

2009.04.28

 宇宙開発戦略本部・宇宙開発戦略専門調査会は27日、宇宙基本計画案をまとめた。計画案では、今後5年間で34機の衛星(大型12機、中型11機、小型11機、超小型衛星は除く)を打ち上げるとしているが、必要な予算については明記していない。事務局によると、宇宙関連予算(今年度3,488億円)を5年間で倍増する必要があるという。河村官房長官が発言した宇宙航空研究開発機構の内閣府移管については盛り込まれず、政治の場に委ねられることになった。基本計画案は今後、パブリックコメントを経て、5月下旬に正式決定する。

 安全保障を取り上げたのも、今回の計画案の特徴だ。今年4月に北朝鮮がミサイルを発射した際、米国の早期警戒衛星に頼った経験から、5年間で4機(光学2機、センサ2機)の情報収集衛星を打ち上げるとともに、早期警戒衛星のためのセンサの研究および宇宙空間における電波情報通信機能の有効性のための電波特性についての研究を実施する。早期警戒衛星を導入するかどうかについては、年末に改訂される中期防衛計画までに検討することになる。

 科学的利用としては、月を当面の太陽系探査の重要な目標とすることが盛り込まれている。第1段階として、2020年ごろに月に科学探査拠点を構築する準備として、二足歩行ロボットなどによる高度な無人探査の実現を目指す、としている。今後1年間かけて、意義、目標、目指す成果、研究開発項目、技術的ステップ、中長期的スケジュール、資金見積もりなど具体的に検討する中で、焦点となっている独自の有人宇宙輸送手段について検討する。

 日本の宇宙開発利用については、国全体の宇宙に関する総合戦略がない、宇宙の利用実績が乏しい、産業の競争力が不足しているといった課題があった。宇宙基本計画案は、安全・安心で豊かな社会の実現、安全保障の強化、宇宙外交の推進、先端的な研究開発の推進による活力ある未来の創造、21世紀の戦略的産業の育成、環境への配慮という6つの基本方針に沿い、社会的ニーズに対応した今後10年程度の目標を設定し、5年間の開発利用計画を提示したものとなっている。

 具体的な計画としては、災害情報の詳細でスピーディ(発生後4時間以内)な提供、米などの生育状況や品質の把握による農業応用、さらに陸域、海底の資源探査能力向上を目指して、陸域観測技術衛星「だいち」をシリーズ化することが含まれている。センサ性能向上、分析方法の高度化、処理時間の短縮のための研究開発を進め、まず日本が得意なLバンドレーダを搭載した「だいち2号」を打ち上げる。また、アジア地域の高頻度・高分解能での観測を目指して、光学、レーダセンサについて高分解能の性能を低コストで実現する戦略的な小型衛星「ASTRO(仮称)」について、民間との協力も想定した研究開発を進め、まず光学センサを搭載した小型光学実証機を打ち上げ、技術実証を推進する。データ中継技術衛星「こだま」により、運用中の「だいち」の全球規模でのデータ送受信を引き続き進めるとともに、今後の「だいち」シリーズなどの継続的なデータ送受信に必要不可欠なデータ中継衛星の継続的な確保に向けた対応を推進する。海洋監視については、衛星画像と地上の航行状況把握システムとの連携により、船舶の安全を確保するために必要となる船舶の航行状況把握手法などを研究開発する。

 GXロケットについては、中型ロケットとして効率的な輸送の提供、日米協力関係の構築、民間の宇宙開発利用への参入に向けた産業振興などの観点から推進する意義があるとしているが、LNG推進系に関する技術的見通し、需要の見通し、全体計画が明確になっていないことなどを指摘、来年度概算要求までに、開発着手について判断するとしている。

 さらにデブリ(宇宙ごみ)対策として、運用終了した後に大気圏で燃え尽き地上への被害を局限するような研究や、デブリに取り付けた導電性のひも(テザー)に電流を流し、デブリの軌道を降下させる技術など、小型衛星などによる実証研究が盛り込まれている。

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