「黒いダイヤモンド」とも呼ばれる西洋の高級食材、黒トリュフの菌類としての科学的、社会経済的知見に触れる「トリュフフォーラム2026」が東京農業大学(東京都世田谷区)で3月5日に開催された。会場では、講演とともに空輸した黒トリュフが持ち込まれ、200人ほどの参加者は官能試験を体験した。すりおろした黒トリュフをのせたバタートーストの試食もあり、干し草やドライフルーツ、動物の皮革、土、硫黄など多様なものに例えられる香りをそれぞれが楽しんだ。
欧州産は20種、揮発性化合物100種以上を含む
トリュフフォーラムは2017年にスペインで始まった、科学者や生産者、シェフ、愛好家をつなぐ国際会議。欧州菌類研究所(EMI)などが企画しており、菌類学の専門家である江口文陽教授が学長を務める東京農業大学が今年の開催場所になった。

フォーラムは、江口学長による「日本におけるトリュフの現状と可能性」と題した講演から始まった。トリュフになじみのない参加者向けに、トリュフには「黒トリュフ」と「白トリュフ」があるという基本情報から説明した。トリュフの種名を鑑別していく際には外観だけでなく、胞子嚢という袋に入る胞子の数や形状を確認することや、トリュフの成分がヒトの免疫系などに働きかける機能性の高さを紹介した。
次に、欧州産の黒トリュフについて、欧州菌類研究所のフェルナンド・マルティネス・ペーニャ所長が特徴を解説した。黒トリュフは、ナラやカシの木の根と共生して地中で育つ真正地下性菌類であり、キノコの仲間となる。世界では60種、欧州には20種ほどの黒トリュフがある。
石灰質の土壌を好み、気温の寒暖差がある方が成熟に適しているため生息地は限られるが、菌根菌の付いた木を栽培して生産する技術が確立されつつある。旬は11月~翌年3月に限られた季節性の食べ物で、胞子をイノシシや齧歯類、虫に食べて運んでもらおうと動物を引き寄せるにおいがトリュフの香りであるという。その香りは、揮発性化合物100種以上を含むという。
官能試験は嗅覚と視覚と触覚で
トリュフを含むキノコ狩りと森、地域の文化を楽しむ観光の社会経済的知見の紹介の後、参加者には瓶に入ったトリュフが配られ官能試験の体験があった。官能試験は、嗅覚と視覚、触覚でトリュフの質を評価する。まず、イボが並んだような外皮の均一性や成熟度をチェック。外皮や切り取った断面から見える内部の色が、用意したカラーチャートのどの数字の色に当てはまるか確認した後、実際に香りをかぐ。
配られたトリュフの学名は「チューバー・メラノスポルム」で複雑な香りが特徴。硫黄、わら・干し草、キャベツ、バター、ドライフルーツ、マッシュルーム、ゆでたジャガイモ、動物性皮革、土、フルーツといった香りがあるとされる。

官能試験の体験後は、すりおろした黒トリュフをのせたバタートーストを試食した。トリュフは生きた状態を保持するため、生のまま吸水性のある紙に包んだ上で通気性のある容器に入れて3~5度で保存。賞味期限は15日という。
香りを最大限引き出すため、料理の最後にスライスしたりすりおろしたりして加える。20~40度での使用がお勧めで、香りが飛んでしまうため60度以上の高温調理は避ける。卵やパスタ、米のほか、脂肪分35%以上のチーズやバターとの相性が良いという。
感じた香りはしょうゆ? 海苔の佃煮?
フォーラムに参加していた、国産の黒トリュフを人工的に発生させることに成功した森林研究・整備機構森林総合研究所の山中高史・東北支所長はトーストを口にした後、「空輸したことでちょっと時間が経っているので香りが薄くなっていますが、トリュフらしい香りがします」と話した。

筆者も官能試験に挑戦した。生きている割に乾燥していて重くなく、思ったよりも硬いので、指先に少し力を入れたぐらいで潰れる心配はなかった。感じた香りは「しょうゆ」。例示されていた硫黄やわら・干し草、キャベツ、バター、ドライフルーツといった香りは分からず、残念な気分でいたら、他の参加者が「海苔の佃煮のにおいがするのですが」と質問してくれた。専門家の回答は「日頃慣れ親しんだものの香りが認識しやすいです」。日頃食べ慣れているしょうゆの香りを感じて良かったんだと安堵した。
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