わが国の物資補給機「HTV-X」初号機が30日未明、国際宇宙ステーション(ISS)に到着した。2009~20年に活躍した「こうのとり」の後継機で、能力を大幅に強化。各種の実験機器、飛行士の食料や衣料など、ISSの活動に不可欠な物資を無事に届けた。ISS船内でロボットアームを操縦し、HTV-Xを捕捉した油井亀美也(ゆい・きみや)さん(55)は「日本の宇宙計画における歴史的なできごと。この金色の宝箱を開けるのが待ちきれない」と喜びを語った。

HTV-X初号機は26日、鹿児島県の宇宙航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターから、H3ロケット7号機で出発した。その後、米国のデータ中継衛星を介してJAXA筑波宇宙センター(茨城県)の管制室との通信を開始。太陽電池パネルを展開し、姿勢制御を確立した。軌道制御のためのエンジン噴射を繰り返し、徐々にISSに接近した。

30日未明、地球上空を飛行するISSの下10メートルで、ISSと速度を一致させて相対的な停止状態に。HTV-Xの制御を停止する「フリードリフト」の状態にした上で、油井さんがロボットアームの先端をゆっくりと近づけ、午前0時58分、南大西洋上空の高度418キロで捕捉に成功した。その後同4時43分、ISSへの取り付けを完了した。計画では空気漏れがないかの確認や、ISSとHTV-Xの間の電源・通信ケーブルや空気ダクトの連結などを経て、同日夜にも、飛行士が扉を開けて入室する。
捕捉直後の同日午前1時頃、油井さんは「初めてのHTV-Xへの尽力と支援に、心から感謝しています。日本の宇宙計画における歴史的なできごとです。この宇宙船は美しく輝いており、私たちの明るい未来を象徴しています。この金色の宝箱を開けるのが待ちきれません」と声を弾ませた。さらに日本語で「日本が高い技術力で国際的な宇宙開発に貢献していることを知り、誇りを持っていただけたらうれしいです」と話した。
米テキサス州ヒューストンの米航空宇宙局(NASA)の管制室で交信担当の重責を果たしたのは、3回の飛行歴を持ちISS船長も務めた星出彰彦さん(56)。星出さんも日本語で「こうのとりに新しい技術を加えたHTV-Xは、ISSをはじめとする地球低軌道、そして月まで含めて、人類のさらなる可能性を切り開く大きな鍵になります。引き続き一丸となって、新しい未来を切り開いていきましょう」と呼びかけた。

HTV-Xは全長8メートル、太陽電池パネルを開くと幅が18メートルで、打ち上げ時の重さは搭載物資を除き16トン。物資の輸送能力は5.85トンあり、こうのとりの4トン(棚の2トンを除く)のほぼ1.5倍となった。ISS船外で使う物資を機体の外側に搭載する形に改めるなど、機体を合理化。物資を積み込む期限を、打ち上げの80時間前から24時間前に改善した。また、ISSに係留できる期間を2カ月から半年に延長するなど利便性を高めたほか、ISSを離脱後、大気圏突入前に最長1年半、宇宙空間で技術実証の実験などができるようにした。
ISSは2030年に運用を終える計画。HTV-Xは改良を加え、その後も地球上空に設けられる民間宇宙基地や、米国主導の国際月探査「アルテミス計画」で月の上空に建設される基地「ゲートウェー」に物資を運ぶことが想定されている。

関連リンク
- JAXA「新型宇宙ステーション補給機HTV-X」

