6月1日から職場で適切な熱中症対策を取ることが企業に義務付けられる。職場での熱中症による死者が増える傾向にあることを重視した厚生労働省は4月15日に熱中症対策を罰則付きで事業者の義務とする労働安全衛生規則改正省令を公布し、職場での初期症状の早期発見や重症化を防ぐ対応を企業に促すことを決めていた。
厚労省によると、義務化の内容は(1)熱中症の自覚症状がある人や疑いのある人が出た場合の緊急連絡先や担当者を決めるなどの体制整備を事業所ごとに定める(2)作業からの離脱、身体の冷却、医療機関への搬送など重症化防止のための手順を事業所ごとに定める(3)職場での対策の内容を作業者に周知する―など。
暑さ指数28以上か、気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間を超える作業が対象となる。事業者が対策を怠った場合、6月以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金が科される可能性があるという。

厚労省は2023年に働く人の熱中症対策を分かりやすく解説した「熱中症ガイド」を作成するなどして対策を進めてきたが、24年に職場で熱中症になって4日以上職場を休んだ人は1000人を超え、死亡した人は30人を数えて3年連続30人以上となった。
同省が2020~23年の103の死亡例を分析したところ、初期症状の対応の放置や遅れは100件に上り、複数の理由があるものも含めると発見が遅れて重篤化状態で見つかったのが78件、医療機関に搬送しなかったなど対応の不備が41件あったという。同省担当者によると、職場で症状が出た人を早期発見し、重症化させない対策が重要と強調している。
福岡資麿厚労相は改正省令を公布した4月15日の閣議後記者会見で「対策の強化は喫緊の課題で、(職場での対策義務化により)熱中症による死亡災害の減少に向けて取り組んでいきたい」と述べた。厚労省はリーフレットの配布や労働基準監督署による説明会を実施して事業者への周知を徹底する方針だという。


気象庁は2月25日に今年の夏の天候について全国的に暖かい空気に覆われやすく気温が高くなると予測。今夏も猛暑になるとの見方を示した。
同庁によると、5月18日は高気圧の縁を回る暖かく湿った空気が南西から日本付近に流れ込んだことなどから東北や関東甲信越など広い範囲で気温が上昇した。19、20日も多くの地域で暑くなり、20日は山梨県大月市で34.2度、東京都八王子市で33.5度を記録。全国914観測地点のうち200地点以上で最高気温が30度以上の真夏日になった。21日は岐阜県飛騨市内で35.0度を記録。全国で初めて最高気温35度以上の猛暑日となるなど各地で気温が上昇し、22日も多くの地域で5月下旬としては暑くなった。
熱中症に詳しい横堀将司・日本医科大学教授は「熱中症被害は今や災害級どころではなく超災害級だが予防できる災害だ」と強調している。同教授ら専門家は暑さに体が慣れていない時期の対策に注意が必要と指摘している。

関連リンク
- 厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」
- 気象庁「夏の天候の見通し」
- 厚生労働省「福岡大臣会見概要(4月15日)」