国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の大西卓哉さん(49)が、日本人3人目となるISS船長に就任した。船長は現場で飛行士の活動をまとめ、安全監理などを担う。交代の式典で大西さんは「大役は、有人宇宙開発に対する日本の貢献が認められた証しだ。全力で頑張りたい」と意気込みを語った。

大西さんは日本時間19日未明、船内で開かれた式典でロシア人の先代船長から「さあ、これがあなたの鍵だ。私たちの全てであるステーションの面倒を見てほしい」と呼びかけられ、船長の指揮を象徴する鍵状のアイテムを受け取った。

これを受け、大西さんはロシア語、英語、日本語を使い分け「有人宇宙飛行は容易ではない。人類がここまで到達できたのは、世代を超えた献身の積み重ねがあったからだ。大役をいただけたのは私の努力によるものではなく、(ISSの日本実験棟)きぼうや(物資補給機)こうのとりといった日本の貢献が国際社会に認められ、未来へと期待されている証し。その期待に応えられるよう全力で頑張っていきたい」などと語った。
ISS船長は現場責任者として飛行士を統括し、船内の状況や活動を把握して地上の管制と調整を進め、実験などの計画の遂行を目指す。飛行士の健康状態を把握するほか、火災や空気漏出などの緊急時には現場の指揮を執るなど重責を負う。日本人では2014年の若田光一さん(61)、21年の星出彰彦さん(56)に続く就任。今回の任期は、大西さんが地球に帰還する直前までの数カ月にわたる見込み。
大西さんは1975年、東京都生まれ。98年、東京大学工学部航空宇宙工学科卒業、全日空入社。副操縦士を経て2009年、JAXAの飛行士候補者に選ばれた。11年、飛行士に認定。16年7~10月にISSに4カ月滞在し、米民間物資補給機「シグナス」6号機をロボットアームで捕捉する作業や船外活動の支援、きぼうの装置の充実に関する作業、多数の実験などを行った。20年、きぼうの運用管制を行うJAXAのフライトディレクタに認定され、地上から飛行士の活動を支えてきた。先月16日に米スペースX社の宇宙船「クルードラゴン」10号機でISSに到着し、自身2回目の宇宙飛行を開始している。
米ボーイング宇宙船、トラブル究明続く

一方、ISSでは大西さんらの到着の2日後、先行して滞在していた米露の4人がクルードラゴン9号機で地上へと出発し、翌19日に無事帰還した。4人のうち2人は昨年6月、別の米ボーイング社の宇宙船「スターライナー」の有人試験飛行により1週間の滞在予定でISSに到着したものの、往路で生じた同機のトラブルへの懸念から、長期滞在に切り替えていた。スターライナーは計画を変更し、無人で昨年9月に帰還した。2人の帰還手段を確保するため、クルードラゴン9号機が往路で搭乗する飛行士を半減して空席を用意し同月、ISSに到着していた。
スターライナー有人試験飛行の往路では、エンジン機構のヘリウム漏れやエンジン5基の故障が判明した。米航空宇宙局(NASA)は先月末、原因究明や対策の作業を進めており、次回の飛行が年末か来年初めになるとの見通しを示した。有人飛行ができるよう計画しているものの、無人でISSに物資を補給させる可能性もあるという。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は先月末、既にISS長期滞在が決まっていた油井亀美也(ゆい・きみや)さん(55)が7月にも、クルードラゴン11号機で出発すると発表した。油井さんは大西さんと同期で、2015年以来2回目の飛行となる。かつては未発表ながら、スターライナーの本格運用初号機に搭乗するとみられ、同機の座席のフィットチェック(体に適合するかの確認)を繰り返すなど準備を進めていた。同機が本格運用までに時間を要する状況を受け、搭乗機が見直されたとみられる。

◇4月25日追記
一部を訂正しました。
写真1枚目の説明、および本文2段落目
誤「18日未明」
正「19日未明」
関連リンク
- JAXAプレスリリース「大西卓哉宇宙飛行士のISS船長(ISSコマンダー)就任」
- JAXA「大西卓哉」
- 大西卓哉さんのX(旧ツイッター)アカウント
- JAXAプレスリリース「JAXA油井亀美也宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在 搭乗機決定」
- NASA「NASA’s SpaceX Crew-9 Splashes Down Off Coast of Florida」(クルードラゴン9号機が帰還=英文)