宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙ごみ(スペースデブリ)の除去に向けた「商業デブリ除去実証(CRD2)」に関する成果報告会を2月26日に開いた。宇宙スタートアップ企業のアストロスケール(東京都墨田区)の人工衛星が、高度約600キロの軌道を周回するデブリ(H2Aロケットの上段)に15メートルまで接近し、公開されている情報としては世界初の成果を得たという。同社はこの成果を受け、このデブリを捕獲する人工衛星を2027年度に打ち上げる予定だ。

スペースデブリとは、運用を停止した人工衛星やロケット、それらの部品や破片のこと。米スペースXによる通信衛星「コンステレーション」をはじめ、宇宙ビジネスの成長に伴って近年急激に増え、大きさ1ミリ以上のデブリは1億あるという推計もある。運用中の衛星などへの衝突や、衝突によるさらなるデブリ発生が問題となっている。
JAXAでは宇宙利用の持続性確保への取り組みとして、CRD2プロジェクトを立ち上げた。デブリへの接近と近傍での運用から捕獲と軌道上からの除去までのうち、近傍運用までを「フェーズⅠ」としてアストロスケールとの契約を2020年に結んだ。同社は人工衛星「ADRAS-J」を開発し、2024年2月に打ち上げた。

接近と近傍運用の対象となるH2Aロケットは2009年に打ち上げられ、上段の重量は約3トン。衛星利用測位システム(GPS)による位置情報を得ることができず、捕獲のために用意された構造がない「非協力的ターゲット」であり、軌道上を秒速数キロメートルで回っている。

JAXA研究開発部門CRD2プロジェクトチームの山元透チーム長らによると、ADRAS-Jは去年2月の打ち上げ後2カ月ほどをかけてデブリ後方数百メートルまで接近。5月にはデブリの後方約50メートルにつけた。11月に15メートルまで接近し、過酷な宇宙環境に15年以上さらされたデブリの形状や表面の様子、捕獲の難易度に関わるデブリの回転具合などを撮影して確認したという。
JAXAは成果報告会で、地表からデブリまでの接近で定点観測や周回観測を実施し、デブリと衝突せずに安全に離脱できたなどとし、フェーズⅠでクリアすべき4つの目標を達成した、と発表した。
JAXAとアストロスケールは2024年8月にCRD2のフェーズⅡの契約を約132億円で結んでいる。同社が2027年度に打ち上げる人工衛星でデブリを捕獲し、大気圏に落として燃え尽きさせる予定だ。
関連リンク
- JAXA研究開発部門「商業デブリ除去実証(CRD2)」
- アストロスケールプレスリリース「アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」、宇宙空間でデブリから約15mの距離まで接近に成功」
- アストロスケールプレスリリース「アストロスケール、JAXAの商業デブリ除去実証フェーズIIの契約を獲得」