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ノーベル物理学賞に欧米の3氏 アト秒レーザー光技術を開発

2023.10.03

 スウェーデンの王立科学アカデミーは3日、2023年のノーベル物理学賞を、アト秒(100京分の1秒)というごく一瞬のレーザー光技術を開発した米オハイオ州立大学のピエール・アゴスティーニ名誉教授ら欧米の3氏に授与すると発表した。独マックス・プランク量子光学研究所のフェレンツ・クラウス博士(61)とスウェーデン・ルンド大学のアンヌ・ルイエ教授(65)がともに受賞する。同アカデミーは「原子や分子内の世界を探求するための新しいツールを人類に提供した」と評価した。

ノーベル物理学賞の受賞が決まった左からアゴスティーニ、クラウス、ルイエ氏のイラスト(ニクラス・エルメヘード氏、ノーベル財団提供)
ノーベル物理学賞の受賞が決まった左からアゴスティーニ、クラウス、ルイエ氏のイラスト(ニクラス・エルメヘード氏、ノーベル財団提供)

 2021年の真鍋淑郎氏(米国籍)以来の日本人受賞はならなかった。

 素早く動くものを見るためには変化の一瞬を切り取る必要がある。ルイエ氏は1987年、赤外レーザー光を貴ガスに通すと、ガスの原子との相互作用により光の波が変化することを発見。アゴスティーニ氏は2001年、持続時間250アト秒の光パルスを連続して作り出すことに成功した。同じ頃、クラウス氏は独自に同650アト秒の光パルスを単離した。

研究対象と観察する時間スケールの関係。電子の動きは10のマイナス18乗(アト)秒の単位。心臓の鼓動だと秒単位、宇宙の年齢だと10の18乗秒という長さになる(ノーベル財団提供)
研究対象と観察する時間スケールの関係。電子の動きは10のマイナス18乗(アト)秒の単位。心臓の鼓動だと秒単位、宇宙の年齢だと10の18乗秒という長さになる(ノーベル財団提供)

 3氏の貢献により、アト秒レーザーで以前は追跡できなかった原子や分子レベルの非常に速い物理過程を観察できるようになり、エレクトロニクスや医療診断に応用が期待される。日本でも東京大学や理化学研究所でアト秒レーザーの開発を進めている。

 賞金1100万スウェーデン・クローナ(約1億5000万円)は3氏に等分される。授賞式は12月10日にスウェーデンのストックホルムで開かれる。

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