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環境危機時計、今年も「極めて不安」の9時31分 生物多様性や気候変動を懸念

2023.09.14

 世界の有識者アンケートを基に地球環境問題の危機感を時刻で示す「環境危機時計」の世界平均時刻が今年は9時31分だった、と旭硝子財団(島村琢哉理事長)が発表した。昨年より4分針は戻ったものの、23年連続で「極めて不安」な時間帯になる9時を過ぎた。環境分野別時刻では「生物多様性」が9時59分、「気候変動」が9時33分で両分野に対する深刻な危機感を示した。

 同財団は毎年、地球環境問題に関係する専門家や政府、非政府組織関係者らにアンケートし、深刻度を0時1分からの12時間で示している。4月から6月に調査を実施。今年は日本を含む130カ国、1805人から得られた回答を集計した。

 その結果、回答に際して重視した分野は9分野中、気候変動が30%で最も多く、次いで生物多様性が13%、以下「社会、経済と環境、政策、施策」12%、「水資源」9%、「環境汚染」8%などが続いた。分野別の時刻では、「生物多様性」「気候変動」が世界平均時刻より進んだ一方、「土地利用」や「人口」「環境汚染」「水資源」などは遅れたが、それでも「極めて不安」な9時を過ぎている。

9時31分を示した今年の「環境危機時計」(上図)と過去の主な時刻(下図)(旭硝子財団提供)
9時31分を示した今年の「環境危機時計」(上図)と過去の主な時刻(下図)(旭硝子財団提供)

 地域別の全分野(加重平均)の危機感を見ると、ロシアによるウクライナ侵攻が続く「東欧・旧ソ連」は時計が世界平均時刻より30分進んだ10時1分。日本は平均時刻と同じ9時31分だった。日本の分野別時刻では「気候変動」は9時29分だったが「生物多様性」は10時00分でこの分野での高い危機感を示した。

 アンケートでは「環境問題への取り組みの改善の兆し」についても聞いた。その結果、「気候変動」では27%が「兆しがある」とし、「一般の人々の意識」の改善を評価する声が多かった一方、「政策・法制度」では評価が低かった。

 「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標のうちの「世界の問題としての関心度」は「13」の「気候変動に具体的な対策を」、「1」の「貧困をなくそう」、「16」の「平和と公正をすべての人に」、「2」の「飢餓をゼロに」、「6」の「安全な水とトイレを世界中に」の順だった。「日々の生活での関心度」は気候変動のほか、「3」の「すべての人に健康と福祉を」や「7」の「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」が高かった。

 環境危機時計は旭硝子財団が1992年から発表。0時1分から3時0分までが「ほとんど不安はない」、3時1分から6時0分までが「少し不安」、6時1分から9時0分までが「かなり不安」。2000年は8時56分だったが、2001年に9時8分になって以来、針の前後はあったものの「極めて不安」な時刻を示し続けている。時刻が最も進んだのは2018年と20年の9時47分。いずれの年も前年、そしてその年も世界各地から異常高温が報告されている。23年の北半球の夏も世界各地で記録を更新する高温が観測されており、次回の環境危機時計もこれらを反映し、時刻は再び進む可能性がある。

 同財団による32回目となる今回のアンケートでは気候変動問題への関心が高かった。自由記入のコメント欄でも世界で顕在化する気候変動影響や対策の遅れに対する危機感が示された。日本の地球環境工学が専門の世界的に著名な研究者は「世界が経験した干ばつや熱波、山火事、洪水などは気候変動の影響がかつてない規模に達したことを示しており、今後危機感をもって対策を行うことが必要」と記入している。

地域別の今年の環境危機時計時刻(旭硝子財団提供)
地域別の今年の環境危機時計時刻(旭硝子財団提供)

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