文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は、日本を含めた世界主要国の科学技術活動を体系的に分析した「科学技術指標」の2023年版を公表した。主な指標のうち、日本は1年当たりの論文数は世界5位で前年順位を維持したが、注目度が最も高い「トップ1%論文」数は昨年の10位から12位に、「トップ10%論文」も同12位から13位に順位を落とした。
前年同様1位の複数国への特許出願数などの指標では世界的優位を保っているが、注目論文の指標を見る限り依然低迷から抜け出せていない。
NISTEPは科学技術指標の1つとして、2019〜21年の各国の自然科学系の論文などを詳しく分析した。論文は国際共著が多いため、論文関連の指標では国ごとの論文への貢献度を加味して補正している。
「科学技術指標2023」によると、1年当たりの論文数は中国が46万4077本、シェアは24.6%で、以下米国の30万2466本、インドの7万5825本、ドイツの7万3371本と続いた。日本は7万775本で昨年と同じ5位で、シェアは3.8%だった。
他の論文に多く引用される「注目度の高い論文」は世界の中でその国の研究成果レベルを判断する1つの目安とされる。このうち、引用数が極めて高い「トップ1%論文」の1位は中国の5516本でシェアは29.3%。以下米国の4265本、英国の1033本。日本は319本でスペイン、韓国に抜かれて前年の10位から12位に後退し、シェアは1.7%だった。中国と米国を合わせたシェアは各国全体の50%を超えた。
「トップ10パーセント論文」でみると、1位はやはり中国で5万4405本、シェアは28.9%で全体の3分の1に迫っている。2位以下4位までは「トップ1%論文」同様、米国、英国、ドイツの順。日本は3767本で、イランの3770本にわずかながら抜かれて13位に後退した。
注目論文で目立つ分野は日本が物理学、臨床医学と化学、米国は臨床医学と基礎生命科学と物理学、中国は材料科学と化学、工学などだった。
特許出願に着目し、各国・地域から生まれる発明数の国際比較をした「2カ国以上への特許出願数(パテントファミリー数)」(2016〜18年)では、日本は6万5870件、シェア26.0%で1位。2位の米国(シェア22.0%)、3位の中国(同12.2%)を抑えて1位を維持した。
ただ、日本のシェアは30%近くになった2000年代半ばと比べると低下傾向にある。一方、中国が特許の分野でもシェアを伸ばし、論文に関連の指標でいずれも1位になったことなどと合わせると近年の中国の高い科学技術力を物語っている。
研究開発費では、最新統計で日本は18兆1000億円。企業、大学、公的機関を合わせた研究者の数で日本は約70万5000人でいずれも前年同様3位を保った。人材育成の面では、日本の大学院修士課程入学者は2020年度以降増加傾向にある一方、大学院博士課程入学者は03年度をピークに減少傾向に歯止めがかかっていない。
研究者に占める女性の割合の各国比較はデータの時期が異なるが、日本の割合は先進主要国と比べて低い傾向にあり、日本の2022年の実績は英国(17年)、フランス(17年)、ドイツ(19年)のほか、韓国(21年)より、企業、大学、公的機関ともに低い。
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