小型ロケット「イプシロン」6号機が12日午前9時50分43秒、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県肝付町)から打ち上げられたが、機体の姿勢に異常が起き、地上からの指令信号により破壊され打ち上げは失敗した。政府の基幹ロケットの失敗は2003年以来。宇宙空間で実証する民間企業の部品や機器を搭載した小型衛星、学校や研究所の超小型衛星、民間のレーダー衛星の計8基を搭載したが、いずれも失われた。
JAXAによると機体は順調に飛行を続け、打ち上げの約5分後に3段構成の機体のうち第2段の燃焼を終了した。ところが第2段と第3段を分離する前、機体姿勢の異常が判明。地球周回軌道に衛星を投入できないと判断し、9時57分11秒に指令破壊の信号を送った。文部科学省とJAXAは同日、それぞれ対策本部を設置し、今後原因究明を進める。6号機の打ち上げ費用は非公表。
打ち上げ後に会見した文科省の原克彦官房審議官は「国民の期待に応えられず誠に残念。徹底的に原因究明を行い再発防止に努めることが必要だ。わが国の宇宙開発利用の信頼を取り戻すべく、全力を尽くしたい」と述べた。JAXAの山川宏理事長は「関係する皆様のご期待に沿えず、深くお詫び申し上げる」とした。
イプシロンはJAXAの固体燃料ロケット。1段目を大型ロケット「H2A」の固体ロケットブースターと共通にしたほか、点検や管制の合理化などでコストを抑制した。6号機は全長26メートル、重さ95.6トン(衛星除く)。2013年9月の初号機以来、昨年11月の5号機まで連続で成功していた。
後継機「イプシロンS」では、今年度に初打ち上げを目指すH2Aの後継機「H3」との間で技術や部品の共通化をさらに進める。失敗したイプシロン6号機に続き、来年度の初打ち上げを計画していたが、遅れる可能性が出てきた。
基幹ロケットの打ち上げ失敗はJAXA発足直後の2003年11月、液体燃料ロケットのH2Aの6号機以来。同機は政府の情報収集衛星2基を搭載したが、ブースターを分離できず、高度と速度が不足し指令破壊された。ノズルに穴が開いて燃焼ガスが漏れ、ブースターを本体から分離するための配線が加熱して機能しなかったのが原因だった。
政府の主要固体燃料ロケットとしては、イプシロンの先代「M5」が2000年2月、第1段の燃焼異常で速度不足に陥り、天文衛星を軌道に投入できなかった失敗以来となった。
失敗により、搭載した衛星8基を喪失した。このうち小型衛星「レイズ3」と超小型衛星5基は、JAXAの「革新的衛星技術実証プログラム」によるものだった。レイズ3に搭載した民間企業の7つの実証用機器や装置と、名古屋大学、九州工業大学、早稲田大学、米子工業高等専門学校、未来科学研究所の超小型衛星はいずれも公募で選ばれたものだった。
JAXAがIHIエアロスペース(IA、東京)から打ち上げを受託したレーダー衛星2基も搭載していた。民間企業のQPS研究所(福岡)が、多数の衛星を連携して地球を観測する「衛星コンステレーション」の体制を構築する36基のうち、最初の2基だった。
三菱重工業が種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)でH2Aを打ち上げているのと同様に、IAはイプシロンSの2号機からの打ち上げ事業者に選ばれている。今回はJAXAからの業務移管の前段階として、同社がロケットの大半の準備作業の主体となっていた。
関連リンク
- JAXA「革新的衛星技術実証3号機/イプシロンロケット6号機」
- JAXA「革新的衛星技術実証プログラム」
- JAXA「イプシロンロケット」
- 内閣府「宇宙基本計画」