新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を受けた人は、重症化と死亡のリスクが明らかに低いことを示す詳細なデータを厚生労働省がまとめた。データは同省に新型コロナ対策を助言する専門家組織の13日の会合に提出された。政府は20~30代の接種率が20%台で低いことから、この年代の接種率向上を急ぐ方針だ。同会合では、直近1週間の全国の新規感染者数が前週比1.06倍で3週連続前週を上回っていることも明らかになった。専門家の中には「第6波が収まらないうちに第7波の兆しが出ている」とする見方も出ており、政府は感染の再拡大を警戒している。
専門家組織の会合に提出されたデータは、厚労省が今年1月1日~2月28日までの間、茨城、石川、広島の3県の感染者約11万9000人を対象に、重症化率と致死率を年代別に調べた結果。3回目接種を終えた人は年代を問わず、未接種や接種2回以下の人と比べて重症化率も致死率も低くなる傾向が確認された。
データを細かく見ると、例えば70代の致死率は、未接種が2.00%、2回以下は1.14%だったのに対し、3回接種は0.63%。重症化率も未接種、2回以下はそれぞれ3.83%、1.94%だったが、3回接種は0.95%だった。80代以上の人も未接種や2回以下と、3回接種の間の重症化率と致死率の差はさらに開き、3回接種の効果を示した。
若い世代は重症者や死者がほとんどいないため、感染者数で比較すると、20代では未接種は3922人、2回以下は8315人だったが、3回接種は365人。30代もそれぞれ3120人、8575人、610人で感染防止にも効果があることを示した。10代、10歳未満で重症化した3人はいずれも未接種。感染者分析についても3回目接種の効果を示している。
政府が11日に公表した年代別接種率は、若い年代ほど低い傾向が浮き彫りにしている。データによると、その時点で国内で3回目接種を受けた人は約5755万人。全人口の45.4%を占めた。年代別では80代が88.4%と最も高く、次いで70代が86.0%、90代が85.9%。65~69歳が77.8%で、高齢者では高い傾向にあった。しかし、まだ働いている人が多い65~69歳は66.7%、現役世代の50代が51.3%、40代が33.8%。若い世代の30代は25.9%、20代は24.0%。12~19歳では5.4%だった。
この結果について専門家の多くは、若年層は重症化率が低いことから接種の効果や意義が十分伝わっていない、と指摘。若年層も感染すると、家庭や職場で高齢者や基礎疾患がある人へ感染を広げるリスクがあるとしている。
政府は若い人の3回接種率を高めたい考えで、松野博一官房長官は12日午後の記者会見で「若い人でも重症化しているケースがあり、後遺症の心配もある」などと述べた。また接種を促すため、大学や短大、専門学校などの5つの団体に要請し、接種希望の学生の取りまとめなどについて協力を求めたことを明らかにした。
13日の専門家組織会合は全国の感染状況について分析した。その結果、直近1週間の新規感染者は34都道府県で増加。都市部での増加は緩やかだが、岩手や新潟など9県では昨年末からの第6波のピークを上回っていた。年代別では、全国的には10代以下で減少傾向にあるが、50代以上で再び増加傾向がみられた。首都圏の1都3県では10歳未満や20~30代の増加が引き続き顕著だった。
再び新規感染者が増加傾向にある背景に、第6波の主流だったオミクロン株BA.1から感染力がより強いとされる同株派生型のBA.2系統への置き換わりが進んでいることがあるとみられる。国立感染症研究所は、BA.2の感染者が占める割合は5月第1週には9割を超えるとみている。
厚労省は成田空港に着いた30代女性が新型コロナウイルスのオミクロン株派生型「XE」に感染しているのを確認した、と11日に発表している。XEはBA.1とBA.2の遺伝情報が交ざっており、BA.2より増えやすい可能性が指摘されている。13日の同会合では、XEは世界で600例以上報告され、感染者が増える速度がBA.2よりさらに10%程度高いとの報告がある、と紹介された。同省は「諸外国の状況や知見を収集、分析するとともにゲノムサーベイランスによる監視を続けていく」としている。
関連リンク
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」
- 厚生労働省「第80回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年4月13日)」