ニュース

宇宙の「レンズ」が教えてくれた 129億光年、観測史上最も遠い星を発見

2022.04.06

 観測史上最も遠い129億光年かなたの星を発見した、と米航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)などの研究グループが発表した。遠すぎて本来は確認が難しいが、地球からみて手前にある重い天体の影響で姿が歪んで見える「重力レンズ効果」のために拡大して見え、ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたことで実現した。これまでの90億光年を大幅に更新した。宇宙初期の状況や、当時作られた星の理解につながるという。

矢印の先が、見つかった最遠方の星(NASA、ESAなど提供)
矢印の先が、見つかった最遠方の星(NASA、ESAなど提供)

 発表によると、発見は重力レンズ効果を利用し、遠くにある宇宙初期の天体を探索するプロジェクトで得られたデータが基になった。銀河団「WHL0137-08」の重力レンズ効果を受けた遠方の銀河の光を、ハッブル宇宙望遠鏡が観測する中で得られた。この星を古英語で朝の星を意味する「エアレンデル」と名付けた。質量が太陽の少なくとも50倍、明るさが数百万倍で、既知の最も重い星に匹敵するとみられる。138億年前の宇宙誕生からわずか9億年後の星ということになる。

 最遠方のこれまでの記録は90億光年離れた「イカロス」で、2018年にやはりハッブル宇宙望遠鏡により見つかった。ただ宇宙誕生から40億年あまりとかなり時間が経っており、より古い時代の星の発見が待望されていた。

 グループの米ジョンズホプキンス大学の研究者は「エアレンデルはイカロスよりはるかに離れており、当初は信じられなかった。この距離だと通常は銀河が小さな汚れのように見え、何百万もの星の光が混ざり合っている。しかし、エアレンデルを含む銀河は重力レンズ効果で三日月のような形に拡大されている」と述べている。明るさは1000倍以上に増幅しているという。

 エアレンデルに対し、昨年12月に打ち上げられたジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による高感度の赤外線観測にも期待がかかる。宇宙が重い原子で満たされる前の時代に形成されたエアレンデルは、原始的に水素とヘリウムだけでできている可能性がある。その場合、宇宙誕生後に初めてできたタイプの星の、初めての証拠になるかもしれないという。

 成果は英科学誌「ネイチャー」に3月30日に掲載され、NASA、ESAなどが31日に発表した。なお単独の星ではなく最遠方の銀河としては、地球から134億光年離れたものが見つかっている。

関連記事

ページトップへ