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稲盛財団が将来期待の2研究者に10年間で計1億円を助成

2021.03.25

 稲盛財団(金澤しのぶ理事長)が「稲盛科学研究機構(InaRIS)フェローシッププログラム」の2021年度対象者に東京大学先端科学技術研究センター教授の西増弘志氏(41)と北海道大学低温科学研究所教授の山口良文氏(45)の2人を選んだ。このプログラムは基礎科学の分野で将来を担う比較的若い研究者を継続的に支援するのが目的で、2人にそれぞれ年間1000万円の研究費を10年間、計1億円ずつ助成する。

 西増氏は2002年東京大学農学部卒。研究テーマは「新規RNA依存酵素の探索」。

 稲盛財団によると、RNA依存性DNA切断酵素の「Cas9」はゲノム編集などに応用されている。自然界にはCas9のほかにも多様なCas酵素が存在するが、多くの機能は謎に包まれている。

 同氏は未解明のCas酵素群の探索や構造機能の解析を進め、多様なCas酵素の作動機構の解明を続けている。今後10年の間、大胆で自在な発想の下、Cas酵素研究の進展とゲノム編集ツール発展が期待されるという。さらに全く未知な有用タンパク質-RNA複合体酵素の発見につながり、その構造と動作の仕組みの解明を通じて生物学の新たな発展も期待できる点も評価した。

西増弘志氏(稲盛財団提供)
西増弘志氏(稲盛財団提供)

 山口氏は1999年京都大学理学部卒。研究テーマは「哺乳類の冬眠能を構成する因子固定とその機能検証」。

 同財団によると、冬眠は、エネルギー消費を抑え低体温状態で厳しい冬などを乗り切る生存戦略だが、冬眠できる哺乳類は限られている。また、冬眠状態では体温やエネルギー代謝が大きく変化することなどが知られているものの、その分子機構の多くは未解明のまま。

 同氏は冬眠についての3つの謎とされる「低温耐性」「季節による体の変化」「冬眠発動」の分子機構の解明を目指している。今後 10 年の間、これまでにも増して斬新な発想に基づいた精緻な研究を展開し、冬眠の謎を解き明かすことが期待されるという。医学薬学研究への応用も期待できる点も評価した。

山口良文氏(稲盛財団提供)
山口良文氏(稲盛財団提供)

 InaRISフェローシッププログラムは、「京都賞」を運営する稲盛財団が日本の科学をリードする人材の育成を支援し、長期的な視野で挑戦的な研究を推進してもらうことを狙い、財団設立35周年を記念して2019年に創設した。21年度は、国内の大学や研究機関の研究者ら66人から応募があった。22年度も2人を募集し、対象分野は「『物質・材料』研究の前線開拓」。5月21日~7月29日まで、稲盛財団のウェブサイトから受け付ける。

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