厚生労働省は17日、ゲノム解析で変異株の種類が確認された株が26都道府県の399人から検出されているとの最新集計をまとめた。同日午後開かれた、同省に新型コロナウイルス対策を助言する専門家組織(アドバイザリーボード)の会合で報告された。
この会合では「全国の新規感染者数は3月上旬以降、横ばい状態から微増傾向になっている」との分析をまとめた。多くの専門家は変異株の広がりを主原因とする感染再拡大の可能性を懸念している。一方、政府は首都圏の医療施設の病床使用率が改善されていることなどから、1都3県に出している緊急事態宣言を21日までで解除する。
厚労省は国内で見つかっている変異株の変異を「N501Y」と「E484K」の2種類に分けてゲノム解析結果を分析した。英国で確認された株「VOC-202012/01」、南アフリカで確認された株「501Y.V2」、ブラジルで確認された株「501Y.V3」、フィリピンで確認された株は「N501Y」の変異を有していると分析し、従来株よりも感染しやすい可能性がある、としている。特に英国確認株については「重症しやすい可能性も指摘されている」とした。
また 、英国確認株以外の南アフリカ確認株、ブラジル確認株、フィリピン確認株はそれぞれ「E484K」の変異を有していると分析。「免疫やワクチンの効果を低下させる可能性が指摘されている」「種々の変異株にも一定の有効性が期待できるが今後も変異を注視し、引き続き検討が必要」としている。
「N501Y」の変異がある変異株について厚労省のアドバイザリーボードは「現状より急速に拡大するリスクが高い。変異株に対して自治体による積極的疫学調査が行われる中で変異株の感染者とクラスター報告数の増加傾向が見られる」と指摘。「変異株の感染が継続している中で感染を再拡大させないための取り組みが必要。今後流行するウイルスは変異株に置き換わっていく可能性もあり、さらなる流行拡大につながるおそれに留意が必要」と強調した。また「E484K」の変異がある変異株については「継続してより詳しい実態把握をする必要がある」としている。
厚労省によると、種類が確定した変異株が検出されたのは兵庫県が94人で最多。続いて大阪府72人、埼玉県57人、新潟県32人、神奈川県28人、京都府24人、東京都14人など。国内で検出された計399人のほか空港検疫で74人から検出されており、合計すると検出者は473人になった。東京都の新規感染者数は全国で最も多いが、これまでは変異株検査が少なく、検出例も少なくなっている。
検出399例のうち英国確認株が最も多く374例、南アフリカ確認株は8例、ブラジル確認株が17例。このほか、2月25日にフィリピンから成田空港に入国した男性から変異株が検出されているほか、国内では「501Y」の変異はないが「E484K」の変異がある、現段階で起源不明の変異株が多数見つかっており、詳しい調査が行われている。
兵庫県の神戸市は1月下旬からいち早く、新規感染者の過半数について変異株かどうかの検査を実施している。3月16日時点で兵庫県全体での検査対象の3割以上が変異株だった、と厚労省に報告。変異株は全国的に広がっており、今後さらに増える可能性が高い。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は10日の衆院厚生労働委員会で「早晩、変異株が主流になる」と述べ、警戒感を示していた。
関連リンク
- 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症について」