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今年の日本国際賞に太陽光発電、がん解明の豪米の3氏

2021.02.02

 国際科学技術財団(小宮山宏理事長)は1月29日、2021年の日本国際賞授賞者に、シリコンを使った新しいデバイスを開発して太陽光発電の大幅な効率向上を実現したオーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のマーティン・グリーン教授(72)と、多段階の発がんの仕組みを解明し、がん治療の進歩に貢献した米ジョンズ・ホプキンズ大学のバート・フォーゲルシュタイン教授(71)、米マサチューセッツ工科大学のロバート・ワインバーグ教授(78)の3氏を選んだと発表した。授賞式は4月15日に東京都内で開催する予定だが、新型コロナウイルスの感染状況によってはオンライン形式で行うという。

 オーストラリアのグリーン教授は「資源、エネルギー、環境、社会基盤分野」の授賞で、授賞理由は「高効率シリコン太陽光デバイスの開発」。

 同教授は、1970年代から結晶シリコンを使った太陽光発電デバイスのエネルギー効率を高める研究に取り組み、70年代以降、約17%で頭打ちだった太陽電池のエネルギー変換効率を99年に25%まで引き上げることに成功。高効率化とともに低コスト化、量産化などに貢献したほか、多くの技術者や経営者、起業家を多く育成した。

 国際科学技術財団は「再生可能エネルギーによる低炭素・脱炭素社会実現への見通しを現実的なものとしたことは大きな達成である」などと評価した。

 米国のフォーゲルシュタイン教授とワインバーグ教授は「医学、薬学分野」の授賞で、「多段階発がんモデルの提唱と実証及びそれらがもたらしたがん治療への貢献」が授賞理由。

 2人は、1つの正常細胞に複数のがん遺伝子とがん抑制遺伝子の変異が複数回起きることにより細胞ががん化するという概念「多段階発がんモデル」を提唱。ワインバーグ教授は正常な培養細胞に各種がん関連遺伝子を導入する実験により、またフォーゲルシュタイン教授は患者の大腸がん発症過程を解析することにより、この概念の正当性を実証した。この研究はがんの早期発見だけでなく、個人ごとに異なる遺伝子の特徴に合わせて病気を治療・予防する「個別化医療」につながった。

 同財団は「発がん機構の本質を明らかにし、がんの早期発見、予防、治療への新たな道を切り開いた」と評価した。

 国際科学技術財団によると、日本国際賞は、独創的、飛躍的な成果を上げて科学技術の進歩に大きく寄与し、人類の平和と繁栄に著しく貢献した世界の科学者を顕彰する目的で創設され、1985年に初回授賞式が行われた。2021年の授賞者については、国内外約1万4000人の著名な科学者や技術者に授賞者の推薦を依頼し、推薦された計385件の候補の中から、審査委員会などによる厳選な審査で3氏を選んだという。

マーティン・グリーン教授
マーティン・グリーン教授
バート・フォーゲルシュタイン教授
バート・フォーゲルシュタイン教授
ロバート・ワインバーグ教授
(顔写真はいずれも国際科学技術財団提供)
ロバート・ワインバーグ教授
(顔写真はいずれも国際科学技術財団提供)

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