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海底下1180メートルの過酷環境で微生物発見 酢酸などを栄養に

2020.12.09

 海底下1180メートルで、セ氏120度の高温に耐えて暮らす特殊な微生物を発見した、と海洋研究開発機構(JAMSTEC)などの国際研究グループが発表した。場所は高知県の室戸岬沖で、堆積物とその下の海洋地殻との境界付近。酢酸などを栄養にする特有の生態を持つ。海底下の微生物の種類が温度に大きく左右されることが分かり、地球の生命圏の理解につながる成果という。

室戸岬沖の海底下1176.8メートルから検出された微生物細胞(中央に1細胞)。右下のスケールは20マイクロメートル(1マイクロは100万分の1)=JAMSTEC提供
室戸岬沖の海底下1176.8メートルから検出された微生物細胞(中央に1細胞)。右下のスケールは20マイクロメートル(1マイクロは100万分の1)=JAMSTEC提供

 研究グループは2016年、地球深部探査船「ちきゅう」により、南海トラフの沈み込み帯先端部にあたる室戸岬沖約125キロ、水深4776メートルの海底を1180メートルまで掘り試料を採取。深さごとに微生物の種類、堆積物の性質や温度、隙間にある水に含まれる成分などを調べた。

 その結果、海底下829~1021メートルでは生命の活動が見つからなかった。しかしさらに深く、1021メートルから堆積物と海洋地殻の境界である1180メートルまで、セ氏110~120度の範囲では微生物細胞が見つかり、しかも深くなるにつれて増えていった。詳しい分析を通じて、堆積物に含まれる酢酸などを栄養分とし、高温で生きられる「超好熱性微生物」とみられることが分かった。

 この種の微生物は深海底の熱水噴出孔や、陸上の温泉などで既に見つかっているが、地球の深部に通常みられる低栄養の環境では初めてという。

 海底下のどこまで生命が存在するかは、よく分かっていない。JAMSTECマントル掘削プロモーション室の稲垣史生室長は「地球内部での、温度などの変化に対する生命の適応や、その影響を理解する上で極めて重要な知見が得られた。(海洋地殻の下の)上部マントルにも生命がいておかしくないと考えているが、まずは海洋地殻の実態を解明したい。さらなる探査、試料回収が期待される」と述べている。

 研究グループはJAMSTECのほか、ドイツ・ブレーメン大学、米ロードアイランド大学、高知大学、産業技術総合研究所、東京大学、京都大学、神戸大学などで構成。成果は米科学誌「サイエンス」電子版に4日掲載された。

地球深部探査船「ちきゅう」=JAMSTEC提供
地球深部探査船「ちきゅう」=JAMSTEC提供

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