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サイエンスアゴラ2020、オンラインで開幕 「Life」見つめる8日間

2020.11.16

 よりよい未来社会のあり方を科学者と市民がともに考える国内最大級の科学イベント「サイエンスアゴラ2020」が15日、開幕した。科学技術振興機構(JST)が主催。15回目の今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受け、初めてオンライン形式となった。22日まで8日間の会期中、「Life(ライフ)」をテーマに、私たちの生命や生活、人としてのあり方と科学技術の接点について考えを深めていく。

開幕セッション。登壇者は配信会場からとオンラインの2つの方法で参加した=15日、東京都江東区の日本科学未来館
開幕セッション。登壇者は配信会場からとオンラインの2つの方法で参加した=15日、東京都江東区の日本科学未来館

 アゴラは所属や年代、国籍を超えて人々が対話する場を作ろうと2006年から毎年開催。日本科学未来館(東京都江東区)などを拠点に参加者が集まる例年と違い、オンライン開催の今年は遠隔地からも参加できるため、これまで以上に地域や世代を超えた参加が見込まれている。

 15日午前の開幕セッションでは、まずJSTの佐伯浩治理事が開幕を宣言。コロナ禍の状況に触れた上で「今の危機をどう乗り越え命を守るか。これからの生活、人生はどうなるか。科学技術が将来の人類の幸福にどんな役割を果たすか。皆様と話し合いたい」と挨拶し、会期中の活発な議論を呼びかけた。

 スピーチでJSTの濵口道成理事長は「今年ほど『Life』に関していろいろなことを感じる年はなかった。個性と可能性を皆様が開花できるような社会を実現するため、科学技術をしっかり支えていきたい。8日間しっかり議論させていただく」と発言。また経営共創基盤の冨山和彦IGPIグループ会長が「科学技術は常に正と負の側面があり、それをどう正の方向に持っていくか、人間の知恵が問われている」と提起するなど、コロナ禍が社会に混乱と変化を引き起こしている現状を受け、それぞれの見方を提示した。

 ディスカッションではインキュビオンのタカハシショウコCEOを進行役に迎え、科学技術のあり方や未来の社会像をめぐり濵口さん、冨山さんら5人が活発な議論を重ねた。

開幕セッションのディスカッション。科学技術のあり方や未来の社会像をめぐり議論を重ねた=15日、東京都江東区の日本科学未来館
開幕セッションのディスカッション。科学技術のあり方や未来の社会像をめぐり議論を重ねた=15日、東京都江東区の日本科学未来館

 午後には第2回「輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)」の表彰式が行われ、理化学研究所の坂井南美(なみ)主任研究員がジュン アシダ賞、東京工業大学の星野歩子(あゆこ)准教授がJST理事長賞を受賞。輝く女性研究者活躍推進賞に輝いた群馬大学からは、平塚浩士学長が出席した。

 続くトークセッションには受賞者と女子高校生2人らが登壇。進路をめぐる複雑な思いを吐露する高校生に対し、坂井さんが「今、面白いと思うものに集中することはすごくよいこと。(苦手なことも)いざ必要になった時にまた勉強する形で進むとよい」、星野さんが「自分の思いが強ければ強いほど必ず助けてくれる人がいて、必ず道は開ける」などとアドバイスした。

「輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)」表彰式に続き、受賞者や高校生らが登壇して開かれたトークセッション=15日、東京都江東区の日本科学未来館
「輝く女性研究者賞(ジュン アシダ賞)」表彰式に続き、受賞者や高校生らが登壇して開かれたトークセッション=15日、東京都江東区の日本科学未来館

 会期中、コロナ関連のイベントが多数開かれる。15日午後の「アゴラ市民会議『人と人の間はテクノロジーでつなげるか~ポストコロナ社会における人間らしいLifeのゆくえ』」では、人と人の関わり合いの変容や、それを支える技術のあり方を探った。「世界中の人が共通の敵はコロナと思っており、これだけ共通の話題で盛り上がることを、逆にチャンスにすべきでは」などと、進行役を含む識者4人が独自の見方を基に議論を深めた。

 このほか、社会課題の地域での解決と科学技術に焦点を当てた「STI for SDGs」アワードの表彰イベント(19日)や施設のバーチャルツアー、科学実験、トークショーなど、科学に親しめる多彩なイベントが予定されている。13、14日に開催した「プレアゴラ」を合わせ、企画は計約100件にのぼる。

 参加者が質問などを通じ登壇者と双方向の交流ができるZoomウェビナー(オンラインのセミナー)は、開催3日前の午後11時45分までの事前登録が必要。ユーチューブの配信の視聴は申し込み不要となっている。

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