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月面の日の当たる場所で「水分子を検出」とNASA

2020.11.02

 月面の太陽光が当たる場所で水の分子を初検出した、と米航空宇宙局(NASA)が発表した。南極や北極の日の当たらない場所では水の存在が既に有力視されており、「水が月面全体に存在する可能性がある」という。大気のない月面で水が維持される仕組みの解明などが課題となったとしている。

 研究グループがNASAとドイツ航空宇宙センター(DLR)の成層圏赤外線天文台「ソフィア」による2018年の試験観測結果を分析したところ、月の南半球の日が当たる場所にある「クラビウスクレーター」から水分子を検出した。濃度は100〜412ppm(1ppmは100万分の1)と極めて微量。隕石などの衝突でできるガラスの中や、土壌の粒子の隙間に閉じ込められた状態にあるとみられるという。

月のクラビウスクレーターから水分子が検出されたことを示す概念図(NASA提供)
月のクラビウスクレーターから水分子が検出されたことを示す概念図(NASA提供)

 NASAは「この結果は水がどう作られ、大気のない過酷な環境でどうして宇宙空間へと散逸していかないのかという、新たな疑問を提示している」としている。水がある原因として、水を含む隕石が衝突した可能性や、太陽から届いた水素が月面で鉱物に含まれる酸素と反応して水酸基ができ、さらに放射線により水に変換された可能性を挙げている。

 米アポロ計画により、月面には水がないといったん結論づけられた。ところが1990年代に入ると米探査機の観測で極地に氷のような物体や水素原子が見つかり、水がある可能性が浮上。2018年には米国の研究グループが、インドの探査機に搭載したNASAの観測機器のデータを基に、極地の日が当たらない部分に水があると発表した。

 米国は24年にアポロ以来の有人月面着陸を果たし、日欧などと探査や開発を行う「アルテミス計画」を推進。水を採掘して水素と酸素に分解すれば、ロケット燃料などとして使えると期待されている。ただ水の存在や量をめぐって研究者の見方が分かれており、人類が利用できるかどうかは未解明。探査や研究が重要視されている。

 ソフィアは大型ジェット旅客機「ボーイング747SP」に口径2.5メートルの反射望遠鏡を取り付けた「空飛ぶ天文台」。最高高度約14キロを飛行し、地上では大気に遮られてしまう宇宙からの赤外線を観測できる。

成層圏赤外線天文台「ソフィア」(NASA提供)
成層圏赤外線天文台「ソフィア」(NASA提供)

 研究グループは米ハワイ大学、ジョージア工科大学、NASAなどで構成。成果は10月26日付の英天文・宇宙科学誌「ネイチャー・アストロノミー」に掲載された。同日付には別のグループにより、月の極地には太陽光が当たらず水を氷の状態でとどめる微小な地形「コールド・トラップ」がこれまでの認識より多くあるとする論文も掲載された。

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