東北大学と島津製作所(京都市)の共同研究グループは、吐く息で新型コロナウイルス感染の有無を調べる検査法を開発したと発表した。呼気の中に含まれるウイルスやタンパク質などを解析する手法を用いた世界初とみられる技術で、医療現場で普及すれば約1時間で結果が出る簡便な検査法となる。研究グループは今後も技術開発を進め、新型コロナウイルスだけでなく、多くの疾患の診断にも使える「呼気医療」に発展させたいとしている。
東北大学の大学院医学系研究科と加齢医学研究所が島津製作所と共同で開発した検査法は、まず検査対象者に5分程度、呼気回収装置(エアロゾル採取システム)に安静時呼吸で息を吐いてもらう。次に呼気を冷却凝縮し、約1ミリリットルの呼気凝縮液を得る。これを「オミックス」と呼ばれる技術を使い、ウイルスやウイルス感染に関連するタンパク質を抽出して解析する仕組みだ。PCR検査と同レベルの精度があり、既に神奈川県内の病院で約10人の新型コロナ感染症患者に使ってもらい検査の有用性を実証したという。
研究グループによると、オミックスはタンパク質や代謝物などの生体分子を解析する技術で、吐く息を使う「呼気オミックス」で新型コロナウイルスを検出する試みはこれまで海外でも例がない。呼気を検体とする解析システムは、PCR検査など現行の検査法と精度は同じながらより多くのデータが得られることから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を予測することも可能という。
東北大学と島津製作所は、今回開発した検査法はCOVID-19以外の感染症のほか、心臓病や脳卒中などの循環器系や肺炎、気管支炎などの呼吸器系の疾患、糖尿病などの代謝性疾患といった多くの疾患の診断への活用も期待できるとしている。当面はこの検査法の関連装置をより小型化するなど、医療現場などで手軽に使えるための実用化研究を急ぐ方針だ。
関連リンク
- 東北大学プレスリリース「息を用いた新型コロナ検査法を開発 -呼気オミックスによる未来型呼気医療への展開」