文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が、日本を含めた世界主要国の科学技術活動を体系的に分析した「科学技術指標2020」を公表した。主な指標のうち、自然科学の論文数で中国が米国を抜いて初めて世界1位になった。日本は4位、注目度の高い論文数で日本は9位で、いずれもの指標でも10年前より順位を落とした。一方、複数国への特許出願数で日本は昨年、一昨年に引き続きトップを維持している。
同研究所は主要指標の一つとして、2016〜18年の調査対象期間に科学誌に掲載された自然科学の論文を分析した。論文は国際共著が多いため、国ごとの論文への貢献度を加味して本数を修正した(分数カウント法)。調査対象期間の年平均論文数は約154万本(年平均)。直近の2018年は約160万本だった。
1年当たりの論文数は中国が約30万5900本、シェア19.9パーセントで、米国の約28万1500本、18.3パーセントを抜いた。3位はドイツで約6万7000本、4.4パーセント、4位が日本で約6万4900本、4.2パーセントだった。
中国が1位になるのは分析が始まった1981年以降初めて。20年前は9位だったが10年前に2位に上がっていた。1年当たりの論文数で10年前と比べると、今回中国は約8万4600本から大きく増加した。上位の多くの国が論文数を増やしている中で日本は今回、10年前の約6万6500本より減り、順位もドイツに抜かれて3位から4位に下がった。
他の論文に多く引用される「注目度の高い論文」の「Top10パーセント補正論文数」でみると、1位は米国のシェア24.7パーセントだが、2位の中国の22.0パーセントが迫っている。米中両国で半分近いシェアを占めているのが目立つ。日本は2.5パーセントで9位。20年前(6.1パーセント、4位)、10年前(4.5パーセント、5位)と見比べても低下傾向が顕著になっている。
また2018年の研究開発費(OECD推計)では、円換算で1位は米国で60.7兆円、2位の中国は58.0兆円と米国に迫っている。日本は17.9兆円で、国単位ではドイツや英国より多く3位を保った。中国は対前年度比10.3パーセント増で、主要国中最も伸びている。
2019年の研究者数では、1位は中国で186.6万人、2位は米国で143.4万人。日本は67.8万人で、中国、米国に差を付けられながらも3位を維持している。
このほか、特許出願に着目し、各国・地域から生まれる発明数の国際比較可能な形で計測した「2カ国以上への特許出願数(パテントファミリー数)」(2013〜15年)では、日本は約6万1800件、シェア26.3パーセントで、10年前同様に米国とドイツを上回ってトップを維持した。2位の米国は約5万4200件、23.0パーセント。中国は数、シェアとも大きく増やして10年前の8位から5位へなっており、さらに上位をうかがう勢いだ。
関連リンク
- 科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2020[調査資料-295]の公表について」