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最後のH2Bロケット打ち上げ成功 物資補給機を搭載

2020.05.21

 国際宇宙ステーション(ISS)の物資補給機「こうのとり」9号機を搭載したH2Bロケット9号機が21日午前2時31分、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)から打ち上げられた。約15分後、こうのとりの正常な分離に成功した。H2B、こうのとりともに最後の打ち上げとなった。

物資補給機「こうのとり」9号機を搭載し打ち上げられるH2Bロケット9号機=21日午前2時31分、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センター(三菱重工業、JAXA提供)
物資補給機「こうのとり」9号機を搭載し打ち上げられるH2Bロケット9号機=21日午前2時31分、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センター(三菱重工業、JAXA提供)

 H2Bはこうのとりを搭載するため、JAXAと三菱重工業が主力機のH2Aを強化して開発した国産最大のロケット。液体燃料を使う2段式で、H2Aが1基持つ第1段エンジンを2基搭載している。全長約57メートル、重量約531トン。2009年に初号機を打ち上げ、9回いずれも成功した。13年から同社が打ち上げ主体となった。

 18年9月の7号機は機体の液体酸素タンクのバルブの異常、昨年9月の8号機は発射台の火災で、それぞれ打ち上げを延期するなどトラブルが続いているが、今回は当初計画通りの日時に打ち上げた。

 同社の阿部直彦執行役員防衛・宇宙セグメント長は打ち上げ後の会見で、H2AとH2B通算で44機連続成功となったとした上で、「無事に打ち上げられ大変安堵している。まだまだ完全というには遠い。それぞれ(延期原因の)事象は異なるが、慢心せず完成度を高めなければならない」と述べた。

 JAXAと同社はH2A、H2B共通の後継機「H3」の開発を、今年度中の初打ち上げを目指して進めている。来年度にも、こうのとりの改良型「HTV-X」の初号機を搭載して打ち上げる。JAXAの山川宏理事長は「H2BはISSへの物資輸送という重要な責務を果たせた。H2BやH2Aで培った技術力を結集し、H3の開発を進めている。HTV-XとH3により、わが国の自在な宇宙輸送を支える基盤がさらに強固になると確信している」とした。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のため、JAXAと同社は作業計画の変更などにより、種子島を訪れる作業員を2、3割削減。また地元の南種子町などと共に、打ち上げ見学の自粛を呼び掛けた。プレスセンターが開設されず、会見はネットの会議システムを通じて行われるなど異例の態勢となった。

新型コロナウイルス感染症に対応する医療従事者などへの感謝を込め、打ち上げ前に15分間にわたり機体を青色にライトアップした=20日深夜(JAXA提供)
新型コロナウイルス感染症に対応する医療従事者などへの感謝を込め、打ち上げ前に15分間にわたり機体を青色にライトアップした=20日深夜(JAXA提供)

 国産大型ロケットの次の打ち上げは7月15日を予定。H2Aロケット42号機でアラブ首長国連邦(UAE)の火星探査機を打ち上げる。同機は来年2月に火星を回る軌道に入り、着陸はせずに大気を観測する計画だ。

 こうのとり9号機はISSで使用する生命科学実験用の顕微鏡、固体材料の燃焼実験装置の一部、ISSの主電源となる日本製リチウムイオン電池採用バッテリー、宇宙飛行士の食料や生活物資など計約6.2トンを搭載した。計画では25日午後9時15分ごろISSに到着する。

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