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窒素入りのナノチューブを合成 含有率を正確に

2020.04.15

 東京大学大学院理学系研究科の磯部寛之教授らの研究グループは14日、炭素材料のカーボンナノチューブに窒素原子を規則的に埋め込む化学合成に初めて成功したと発表した。窒素の含有率を正確に決めることができ、窒素入りのナノチューブがn型の半導体になりやすいことも分かったという。ナノチューブの性質を制御できれば、半導体への材料応用が加速するとみられる。

 研究グループは2019年、環状炭化水素のベンゼンをつなぎ合わせてナノチューブを合成する新手法を開発。今回、窒素を含む環状分子のピリジンを少量混ぜた。ナノチューブ分子を主に構成する304個の原子のうち、8個を窒素原子にすることができ、窒素の含有率は2.6パーセントになった。

窒素入りナノチューブの分子構造。青い部分が窒素原子、灰色が炭素、白色が水素(結晶構造を横から見た図)(東京大学などの研究グループ提供)
窒素入りナノチューブの分子構造。青い部分が窒素原子、灰色が炭素、白色が水素(結晶構造を横から見た図)(東京大学などの研究グループ提供)
窒素入りナノチューブの分子構造(結晶構造を下から見た図)(東京大学などの研究グループ提供)
窒素入りナノチューブの分子構造(結晶構造を下から見た図)(東京大学などの研究グループ提供)

 カーボンナノチューブやグラフェンなど炭素主体のナノカーボンは、異種元素を埋め込むと、物性を大きく変えられることが知られている。なかでも、窒素入りナノカーボンの研究が盛んだが、合成に物理的な手法を利用していることから、窒素原子の位置や数を制御しながら埋め込むことは不可能だった。

 これまで材料科学分野で検討されてきた窒素入りナノカーボンの窒素含有率は、2〜5パーセントの幅という。今回合成した窒素入りナノチューブは、その幅に収まる含有率であることから、研究グループは窒素入りナノカーボンの電子的性質・化学的性質を正確に探るのに適した組成を持っているとみている。

 また、X線構造解析などから、窒素にナノチューブに電子を注入させる効果があることを見つけた。これまで窒素入りナノチューブは、電子が不足しているp型半導体にも電子が余っているn型半導体にもなることが報告されていた。今回の成果により、窒素が電子の注入を促すことで、n型半導体になりやすくすることが明らかになったという。

 研究グループには名古屋大学と東北大学のメンバーも加わっている。研究成果は英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」 に14日掲載された。

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