欧州とロシアの宇宙機関が、共同で今夏に計画していた火星探査機の打ち上げを2年延期すると発表した。開発の遅れなどが理由。今年は世界で4回もの無人火星探査機の打ち上げが計画され、太陽系探査の活発な動きとして注目されてきたが、陰りが生じることとなった。
欧州宇宙機関(ESA)とロシアの宇宙開発公社「ロスコスモス」は12日、今年7?8月に打ち上げる計画だった探査車「ロザリンド・フランクリン」と着陸機の打ち上げを2022年8月ごろに延期すると発表した。両機関のトップが「機体のハード、ソフトの両面で、さらにテストが必要」との認識で一致したという。延期の理由については、「欧州諸国の疫学的状況の悪化が、(打ち上げ前の)活動の最終段階を損なう」とし、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に付け加えた。延期により、火星到着は2023年の4月か7月になるという。
欧露は共同で火星探査計画「エクソマーズ」を進めており、2016年から周回機が大気の観測を続けている。ロザリンド・フランクリンなどはこれに続く第2弾で、ドリルで地下最深2メートルまで穴を掘り、生命が現存するか、過去に存在した証拠を探す。ただ昨年には機体の降下に使うパラシュートのテスト失敗が相次ぐなど、開発の遅れが指摘されてきた。火星探査機は、火星と地球が互いに接近する約2年ごとに、飛行距離が短くなる打ち上げの好機を迎える。このため今回の延期も2年に及ぶ。
これにより、今年の火星探査機の打ち上げ計画は3回となった。いずれも7?8月の見込みで、米国は現行の探査車「キュリオシティー」の後継機を打ち上げる。地質調査や、大気の主成分である二酸化炭素から酸素を作る実験などを行う。3月5日には公募により、探査車を「パーシビアランス(不屈、忍耐)」と命名した。
またアラブ首長国連邦(UAE)は大気を観測する周回機を、中国は周回機や探査車などを、それぞれ打ち上げる。UAEの周回機は三菱重工業がH2Aロケットで、JAXA種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げる。
関連リンク
- ESAプレスリリース「ExoMars to take off for the Red Planet in 2022」
- ロスコスモスプレスリリース「ExoMars to take off for the Red Planet in 2022」
- NASAプレスリリース「Virginia Middle School Student Earns Honor of Naming NASA's Next Mars Rover」