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温暖化による台風、豪雨被害増を前提にした治水対策求める 国交省の検討会が提言

2019.10.28

 台風19号は記録的な大雨により甚大な被害を及ぼした。今回のように大型台風が誕生し、上陸直前まで非常に強い勢力を維持した背景には地球温暖化が関係していると指摘されている。国土交通省の有識者検討会はこのほど、温暖化により今世紀末までに気温が2度上昇すると豪雨の発生頻度が2倍以上になると予測した上で、河川の治水計画を見直すよう求める提言をまとめた。同省はこれを受け、新たな治水対策の在り方を社会資本整備審議会に諮問した。

 提言をまとめたのは、「気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会」。検討会はここ数年豪雨災害が増えているため、昨年4月から議論を重ね、7月に提言案をまとめ、さらに今月18日に最終的な内容を決めた。その提言は冒頭「治水対策は大きな転換点を向かえている。(提言内容は)過去の観測データのみを活用する治水計画から将来の予測を活用する計画に転換する一歩である」とし、台風被害や豪雨被害の増大を前提とするよう求めた。そして1時間の降水量が50ミリを超える豪雨の発生件数は、約30年前の1.4倍になっているという気候変動の現実を指摘している。

 温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」が、産業革命前と比べた気温上昇を2度未満に抑えるための温室効果ガス抑制策を各国に求めている。このため提言は「2度上昇」を基準に設定、2度上昇した場合は、豪雨の降雨量は全国的に増えて河川の水量の増加による洪水頻度は現在の2倍になると試算した。温暖化による今世紀末の温度上昇が最大値で4.8度と予測するデータを引用し、4度上昇した場合の洪水頻度は現在の4倍になるとしている。

 諮問を受けた審議会は洪水や高潮、土砂災害などによる被害低減対策が検討課題になる。具体的には今回、多くの河川で決壊した堤防や、緊急放流の可否が問題になったダムなどの防災インフラ強化策、さらに浸水想定区域の見直しや水防災意識の向上対策などが議論される見通しだ。現在、国土強靱化基本計画が進行中で、こうした既存の計画との兼ね合いをどうするか、決める必要がある。

 台風19号による甚大な被害は、温暖化の進行とともに急増する台風の大型化や豪雨の増加に、現在の河川の治水対策が対応できていないことを示した。防災インフラの整備は予算や時間がかかる一方、大きな台風や豪雨は今後増えることは確実とみられている。国土交通省検討会の提言案は今回の台風被害の前にまとめられたが、甚大被害を見越すように、現行の河川整備作業の加速化や洪水発生を想定した危機管理対策も求めている。

長野県長野市大字穂保付近の被害地域(10月13日国土地理院 撮影・提供)
長野県長野市大字穂保付近の被害地域(10月13日国土地理院 撮影・提供)

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