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リチウムイオン電池開発の旭化成・吉野彰氏ら3人にノーベル化学賞

2019.10.09

 スウェーデンの王立科学アカデミーは9日、2019年のノーベル化学賞を、携帯電話やパソコン、電気自動車などに広く使われているリチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェローで名城大学教授の吉野彰氏(71)ら3人に授与すると発表した。IT時代の進展に大きく貢献したことが評価された。

 日本人の化学賞受賞は2010年の鈴木章氏、根岸英一氏以来で8人目。日本人の各賞受賞者は合わせると27人になった。

 吉野氏と共同受賞したのは米国テキサス大学オースティン校教授のジョン・グッドイナフ氏(97)とニューヨーク州立大学ビンガムトン校教授のスタンリー・ウィッティンガム氏(77)。97歳のグッドイナフ氏は、最年長受賞記録を更新した。それまでの記録は昨年物理学賞を受賞したアーサー・アシュキン氏の96歳だった。

 授賞式は12月10日にストックホルムで開かれる。賞金900万スウェーデン・クローナ(約9700万円)が吉野氏ら3人に贈られる。

 吉野氏は1948年1月30日生まれ。1970年京都大学工学部卒、京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、旭化成に入社。2003年に旭化成グループフェローに就任した。同氏は同じ化学賞を受賞した白川英樹氏が発見した導電性高分子のポリアセチレンに着目し、充放電可能な2次電池の開発を始めた。そしてコバルト酸リチウムを正極とする2次電池を試作後、1985年にリチウムイオン電池の開発に成功した。リチウムイオン電池は起動力が大きく小型化も可能。携帯電話、ノートパソコン、電気自動車などに使われている。

 吉野氏は受賞決定直後、ノーベル財団のインタビューに次のように語った。

 「私は基礎研究を長くやってきた。1981年からリチウム電池の研究を本格的に始め、1985年に作ることができた。それまで長い研究プロセスがあった。気候変動は非常に大きな人類の問題だと思う。リチウムイオンは電気を蓄えることができるので持続可能な社会にふさわしい思っている」

 吉野氏は日本メディア向け記者会見で「ストックホルムがリチウムイオン電池を評価してくれたことをうれしく思うし、(受賞は)若い研究者の励みになってくれると思う」と述べ、研究者のあり方として「頭の柔らかさと執着力が必要。剛と柔のバランスが大切だ」と語った。

 吉野氏は昨年の第34回日本国際賞を受賞している。同賞受賞者発表記者会見で「リチウムイオン電池については多くの研究者がその後も開発に携わっているが、若い研究者が私の受賞を契機に素晴らしいイノベーションを生み出してくれると思う」などと喜びを語っていた。

 ノーベル化学賞は、日本人ではこれまで1981年の故福井謙一氏、2000年の白川氏、2001年の野依良治氏、2002年の田中耕一氏、2008年の故下村脩氏、2010年の鈴木氏と根岸氏が受賞している。

2018年の日本国際賞受賞の喜びを語る吉野彰氏
2018年の日本国際賞受賞の喜びを語る吉野彰氏
化学受賞者のイラスト。左からジョン・グッドイナフ氏、スタンリー・ウィッティンガム氏、吉野彰氏(ノーベル財団提供)
化学受賞者のイラスト。左からジョン・グッドイナフ氏、スタンリー・ウィッティンガム氏、吉野彰氏(ノーベル財団提供)

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