直径約100メートルを超すとみられる小惑星が日本時間の25日午前に地球の近くを通過していた。地球にもし落下していたら東京都全域に匹敵する広さに壊滅的打撃を与える可能性もあったという。米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)や日本スペースガード協会関係者らが30日までに明らかにした。
JPL地球近傍天体研究センター(CNEOS)研究者や地球に衝突する可能性がある天体を観測、監視している日本スペースガード協会(白井正明理事長)の浅見敦夫副理事長のほか、ツイッターで情報交換している世界各国の天体観測関係者らの情報を総合すると、この小惑星は「2019 OK」と名付けられた地球近傍天体(NEO)。大きさは推定59〜130メートル。NEOは地球衝突が懸念される天体の総称で、各国の観測機関などが監視している。
小惑星「2019 OK」が地球に接近していることを初めて見つけたのはブラジルの観測機関で日本時間の24日午前だった。その約1日後の25日午前には地球から約7万2000キロまで接近し、推定速度秒速20数キロメートルで通過した。この距離は地球と月の距離の約5分の1以下で、天文学的には地球落下の可能性もあるニアミスとされる。もし地球に衝突していれば最悪のケースで東京都とほぼ同規模の範囲を壊滅させるほどの打撃を与える可能性があったという。
小惑星が地球に衝突して大打撃を与えた例としては1908年に直径約60メートルの小惑星がロシア・シベリアに落下した「ツングースカ大爆発」が有名で東京23区と同程度の範囲で被害が出たとされる。また2013年にはロシア・チェリャビンスクに直径約17メートルの小惑星が落下して衝突による衝撃波により人的物的被害が出ている。通常10メートル程度の小惑星だと衝撃波による人的物的被害とされるが、100メートル程度の大きさになると都市の破壊や巨大津波による甚大な被害をもたらすとされる。
日本スペースガード協会の浅見副理事長によると、直径が100メートル程度の小惑星は地球にかなり接近しないと見えないことがある。今回の「2019 OK」は地表面に対して浅い角度で接近し、地球、太陽と「2019 OK」の位置関係から観測しづらくなった。最接近した際は推定9等級程度の明るさだったとみられるが、発見当時は推定15等級程度だった。ブラジルの観測機関の比較的小さな望遠鏡で見つかったという。今年に入って、地球に同じくらいの距離まで接近した小惑星は6つあり、このうち6月下旬に接近した「2019 MO」は実際に地球に落下したとみられるが、直径が5メートル程度だったため、目立った影響はなかったとみられる。
日本スペースガード協会は、1996年10月に設立され、小惑星やすい星の発見や監視のほか、宇宙ごみ(スペースデブリ)の監視・追跡などを行っている。文部科学省の補助金により岡山県美星町に建設された美星スペースガードセンターを運用している。
小惑星は太陽系にある小さな天体で、その多くは火星と木星の間に集まっている。「始原天体」とも呼ばれ、約46億年前に太陽系が生まれたころの様子をとどめているとされる。日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が昨年6月に「りゅうぐう」に到達。今月11日には、りゅうぐうへの2回目の着陸に成功し、世界初となる小惑星地下物質の採取に成功するという快挙を成し遂げている。りゅうぐうは直径は900メートル近くある。