テリジノサウルス類などの獣脚類の恐竜は集団で巣を守って子育てをしていた—。モンゴルのゴビ砂漠で恐竜が集まって巣づくりをし、卵を守っていたとみられる「集団営巣」の跡を発見した、と筑波大学と北海道大学などの国際共同研究グループがこのほど発表した。恐竜類も鳥類のように集団で巣づくりをしていたことを示す興味深い研究成果だ。研究論文は7月5日付で国際科学誌「Geology」に掲載されている。
研究グループは、筑波大学生命環境系の田中康平助教、北海道大学総合博物館の小林快次教授、兵庫県立人と自然の博物館の久保田克博研究員を中心にカナダや韓国、モンゴルの研究者も参加した。
田中助教らは、2011〜18年の間、計5回にわたってゴビ砂漠の東部にあり、推定8600万〜7200万年前のジャブラント層と呼ばれる白亜期後期の地層を発掘調査した。その結果、同一種類とみられる恐竜の集団営巣の跡を見つけた。巣の化石は約300平方メートルの範囲に15個あり、直径約13センチの卵の化石がそれぞれの巣に3〜30個確認できた。恐竜の種類は卵殻の構造などからテリジノサウルス類と推定された。
また、15個の巣のうち9個の巣でひなが殻を割って出た穴がみつかり、卵がふ化した形跡と断定された。巣の配置や卵の化石の状態などから、テリジノサウルス類の親は集団で巣づくりをしていたと推定される。巣全体の中で少なくとも1つの卵がふ化した巣の割合は「営巣成功率」と呼ばれるが、調査結果から営巣成功率は推定60%。こうした高い営巣成功率は、巣を保護する現在のワニ類や鳥類にも見られるが、テリジノサウルス類の親も巣のそばにいて巣を守る行動をしていたようだ。
テリジノサウルス類は獣脚類恐竜で、体長2〜10メートル。馬のような頭に長い首と大きな胴と前肢にかまのような爪を持ち、鳥類の古い先祖と考えられている。絶滅した恐竜は、鳥類と異なって親が巣の中で卵をふ化させる「抱卵(ほうらん)」をしなかったとみられているが、集団で営巣する際に巣を守っていたのか不明だった。
今回の研究成果は、現在の鳥類に見られる集団営巣時の親の行動が、抱卵しない恐竜類にまでさかのぼることを示している。研究グループは、恐竜が鳥類に進化する過程でまず集団での子育てのための保護行動をして、その後に抱卵行動をするようになったとみている。今後の研究により、恐竜から鳥類に進化する過程で生態や行動がどのように変わっていったか解明できると期待される。
関連リンク
- 筑波大学プレスリリース「恐竜は群れで巣を守っていた! 〜モンゴル ゴビ砂漠でアジア最大規模の獣脚類恐竜の集団営巣跡を発見〜」