土星最大の衛星タイタンをドローン型の小型無人探査機「ドラゴンフライ」で探査するという初の、そしてユニークな計画を米航空宇宙局(NASA)が打ち出した。タイタンは太陽系内の衛星で唯一厚い大気圏があり、初期の地球に似ているとされる。タイタン表面での詳しい探査は、地球での生命誕生の謎を解く手掛かりを与えてくれそうだ。
NASAが6月28日に発表した計画概要によると、ドラゴンフライを搭載した親探査機を2026年に打ち上げ、8年の宇宙の旅を続けた後34年に到着する。親探査機がタイタン上空に到着するとドラゴンフライはパラシュートで地表面に投下される。ドラゴンフライはトンボの意味。大きさは現在普及しているタイプよりかなり大型の数メートルほどになるとみられる。
ドラゴンフライは遠隔操作によりトンボのように8つの回転翼を動かして上空から探査する。砂丘などに何度も着陸して試料を採取し、成分を分析する。タイタンは重力が小さく、大気は窒素が主成分で、地球大気の4倍の濃度があるためにドローン型の探査機が使えるという。大気がある衛星だからできる計画だ。
タイタンはオランダの天文学者により1655年には発見されている。土星では最大、太陽系でも木星の衛星ガニメデに次いで2番目に大きな衛星で、水星より大きい。このため「惑星のような衛星」とも言われる。1979年に土星付近に到着したパイオニア11号をはじめとして80年、81年にそれぞれ付近を通過したボイジャー1、2号や、比較的最近では2004年7月に到着したカッシーニといった米探査機の観測によってかなり詳しいことが分かっている。
これまでの観測により、表面は主に氷と岩石で構成され、太陽から約14億キロメートルも離れているために表面温度はマイナス179度。メタンに似た液体の雨が降り、メタンやエタンの湖や川が存在することなども判明している。タイタンはまた初期の地球に似ているとも考えられている。ドラゴンフライによる探査では、大気や液体の詳しい成分や、生命存在につながる化学物質などこれまでの探査や観測でも分からなかった謎を解明するという。
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