栄養とトレーニングで鍛えられる筋肉のように、栄養となるモノマーと力学負荷があれば強く大きく成長するゲルを北海道大学の研究グループが開発した。まるで「筋トレ」によって強くなるゲルで、長寿命の材料として広い応用分野がありそうだ。研究成果は1日付の米科学誌サイエンス電子版に掲載された。
一般的に鉄などの金属やゴム類の多くは繰り返し力学負荷が加えられると徐々に耐久性が失われる。このため、耐久性が長く保たれる人工材料の研究が世界的に進められている。
北海道大学大学院先端生命科学研究院の?剣萍(グン・チェンピン)教授、中島祐助教、同大学院生命科学院博士後期課程・日本学術振興会特別研究員の松田昂大さんらの研究グループは、重量の9割が水でありながら強靱(きょうじん)な材料として知られる「ダブルネットワークゲル」(DNゲル)に着目した。DNゲルは網目状の高分子だが、もろい網目と良く伸びる網目の複合体で、力学負荷を受けるともろい網目が壊れる。またモノマーを取り込む性質もあることで知られる。
?教授らは、DNゲルに力学負荷を与えると内部の構造破壊が起こると同時に内部のモノマーが重合して新しい構造(高分子網目)が合成されて強度が増すと考えた。そこで栄養となるモノマーを取り込んだDNゲルに人工的に力学負荷を与えて新しいDNゲルに成長させた。その結果、ゲルの強度は1.5倍、硬さは23倍になった。強くなった新しいDNゲルにおもりを付けてモノマーの水溶液中でひっぱる実験を繰り返すたびに丈夫になり、より重いおもりを持ち上げられるようになったという。
研究グループによると、このように「筋トレ」で自己成長するゲルはこれまでなく、長寿命の医療、工業用材料としての応用が期待できるという。研究は、内閣府・総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として進められた。



関連リンク
- 北海道大学プレスリリース「トレーニングで強くなるゲルを開発!」