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電気で飛ぶ航空機の開発が始まる JAXAがコンソーシアムを設立

2018.07.12

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、電気で飛ぶ航空機の技術開発を目指す組織「航空機電動化コンソーシアム」をこのほど設立した。世界の航空機需要が増える中で地球温暖化をもたらす二酸化炭素(CO2)を排出しない「地球にやさしい航空機」の実現を目指すという。

 JAXAによると、世界の旅客需要の増加にともなって航空機の数は今後20年間で倍増することが予想されている。航空機用ジェット燃料は天然の原油を精製して得られる成分を主につくられるため化石燃料に分類される。このため国際民間航空機関(ICAO)の総会で国際線航空機によるCO2の排出規制で合意するなど、航空分野での温暖化対策の機運が国際的に高まっている。しかし従来の技術によるジェット燃料燃費向上策には限界があり、革新的な技術による航空機の電動化やバイオ燃料の導入などが求められていた。電気自動車用のバッテリーやインバータ、モーターなどの性能は近年飛躍的に向上し、小型の航空機に適用可能なレベルになっている。海外では既に電動航空機の実用化に向けた開発が進んでいるという。

 コンソーシアムは7月1日付で発足。運営を担うメンバー(ステアリング会議メンバー)は、JAXAのほか、IHI、川崎重工業、SUBARU、日立製作所、三菱重工航空エンジン、三菱電機と経済産業省の8者。国土交通省や全日本航空事業連合会、日本航空宇宙工業会、東京大学などがオブザーバーとなるほか、多くの航空、電気、素材産業の企業が参加する。

 JAXAによると、航空機のエンジンを電動化するためには、電動モーターや蓄電池の性能を大幅に向上させ、素材を格段に軽量化するなど技術的課題は多い。このためコンソ−シアムでは、航空産業ばかりでなく関係する分野の企業を含めた産、学、官が連携して電気で飛ぶ航空機実現のための革新的技術創出を目指す。

 9日に記者会見したJAXA航空技術部門の担当者は「日本は航空機電動化に適応できる世界に誇る要素技術を持っているが、協業や航空機全機の開発や飛行実証は遅れている。産、学、官連携のオープンイノベーション手法により、抜本的なCO2排出削減可能な航空機の実現に向けた活動をしていく」などと述べた。電気で飛ぶ航空機の実現時期は未定だが、年内に具体的な目標を決めるという。

画像1 電気で飛ぶ航空機のイメージ(JAXA提供)
画像1 電気で飛ぶ航空機のイメージ(JAXA提供)
画像2 「航空機電動化コンソーシアム」の枠組み(JAXA提供)
画像2 「航空機電動化コンソーシアム」の枠組み(JAXA提供)

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