約110億年前の銀河の中心部で新しい星が爆発的に誕生していることを世界最高性能の望遠鏡群を駆使した観測で突き止めた、と国立天文台を中心とした国際研究グループがこのほど発表した。銀河同士が合体して巨大な銀河に成長する現象は知られていたが、一つの円盤型銀河が自ら巨大な楕円(だえん)型に変わるという銀河の新しい成長過程をとらえた観測成果として注目される。
国際研究グループは、国立天文台とドイツ・マックスプランク地球外物理学研究所の研究員である但木謙一(ただき けんいち)さんと東北大学大学院理学研究科天文学専攻の児玉忠恭(こだま ただゆき)教授(元国立天文台准教授)ら国内研究機関のほか、米国やドイツなどの多くの研究者も参加した。同グループは分担して国立天文台が米国・ハワイ州で運用する、すばる望遠鏡と米国のハッブル宇宙望遠鏡、日米欧が協力してチリで運用するアルマ望遠鏡という世界最高性能の望遠鏡群を駆使して、約110億光年のはるかかなたの銀河を観測し、観測結果を解析した。
その結果、約110億光年先の円盤の形をした銀河の中心部で、星の材料となるガスやちりが密集して新しい星が爆発的に誕生していたことが分かったという。星が形成される規模は天の川銀河の約40倍とみられ、観測結果は、銀河の形が円盤型から巨大な楕円型に変えながら成長する様子であると解釈できるという。
今回の観測、解析結果について研究グループは「銀河には衝突合体をしない別の進化過程経路があったことを示す決定的な証拠になる」としている。
関連リンク
- 国立天文台プレスリリース「銀河の形を運命づけた110億年前の転換現象 〜すばる×ハッブル×アルマの最強タッグで完全解剖」