カメの胴は短くヘビが長いわけを「GDF11」という遺伝子が働くタイミングの違いで説明できる、と名古屋大学などの研究グループがこのほど英科学誌電子版に発表した。同グループは脊椎動物の進化解明の糸口になると期待している。
研究グループは名古屋大学大学院理学研究科の鈴木孝幸(すずき たかゆき)講師、黒岩厚(くろいわあつし)教授と、理化学研究所、東北大学大学院生命科学研究科、同大学加齢医学研究所で構成された。鈴木講師らによると、脊椎動物の体の中心にある背骨(せぼね)は頭につながる頸椎(けいつい)から胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙椎(せんつい)、尾椎(びつい)と呼ばれる5つの部分が1列につながっている。後ろ足は骨盤を介して仙椎と接続されている。
研究グループは、ニワトリの胚(受精卵から体が作られて生まれる直前までの状態)を使って後ろ足の発生メカニズムを調べた。その結果、体が形作られる過程で「GDF11」という遺伝子によって作られるタンパク質が働き始めた場所が将来仙椎になり、このタンパク質が将来仙椎になる組織の隣の組織(側板中胚葉)にも働きかけて、そこに骨盤と後ろ足ができることなど、脊椎動物の後ろ足が必ず仙椎の位置に作られるメカニズムが明らかになった。
研究グループは次に、カエルやカメ、ニワトリ、ヘビなど胴の長さが異なる9種類の脊椎動物について、GDF11の働き方を調べた。その結果、カエルやカメなどの胴が短い動物はGDF11が働き始めるタイミングが早く、ヘビや「エミュー」と呼ばれる鳥などの胴が長い動物はそのタイミングが遅いことや、GDF11が早期に働くほど仙椎が早くできることが判明。さらに動物実験でGDF11の機能を阻害すると下半身の位置がずれることも分かったという。
これらの結果から研究グループは、脊椎動物が進化の過程で後ろ足の位置が多様化して胴の長短が生じたのはGDF11が働くタイミングが異なるため、と結論付けた。鈴木講師らは「胎児期にGDF11が作用するメカニズムをさらに調べることにより、下半身の器官の位置を決めるメカニズム解明につながることが期待できる」としている。
関連リンク
- 名古屋大学プレスリリース「脊椎動物の後ろ足の位置の進化(多様化)の仕組みを解明 -ヘビの胴体が長い謎わかった!」