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情報学分野の若手研究者を支援 JSTが「ACT-I」30研究課題を決定

2016.11.21

 科学技術振興機構(JST)は情報学分野の優れた若手研究者を支援する「ACT-I」プログラムの30研究課題をこのほど決定し、発表した。ACT-Iは独創的なアイディアを持つ若手研究者支援を目的として今年度から始まった。JSTによると、選ばれた研究を担う研究者の平均年齢は29.5歳で研究課題も新鮮で意欲的な内容が揃ったという。

 政府は、人工知能(AI)など情報技術の進展と応用を産学官連携で推進するために「人工知能技術戦略会議」を4月に設置。その下で文部科学省は「AIP(人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト)」を開始し、JSTは戦略的創造研究推進事業が関連する研究領域で編成した「AIPネットワークラボ」を運営してきた。この中でJSTは従来の戦略的創造研究推進事業「CREST」「さきがけ」に加えて「独創的な若手研究者の『個の確立』を支援する」ことを目的に新たにACT-I(「情報と未来」研究領域)をスタートさせ、対象研究課題を公募、選考してきた。

 ACT-Iの応募資格は募集時点(今年の4月1日)で35歳未満。新しい発想に基づいた挑戦的な研究構想を持ち、未来を切り拓く気概を持つ大学院生を含めた若手研究者を求めてきた。JSTによると、応募数は144件、応募者の平均年齢は29.3歳。大学院生の応募も35件で、未来の学術、産業、社会、文化のあり方を見据えた多様な提案があったという。平均年齢はさきがけの37.2歳、CREST50.1歳と比べてぐんと若返った。支援対象の選考のポイントは「応募者が主体的で熱意があり意欲が高いか」「考え抜いた具体性のある研究構想か」「専門分野を超えて研究の価値を伝えているか」「未来を切り拓く気概を持っているか」など。

 選考の結果、「大規模データ分析・活用技術」「機械学習・知的情報処理技術」「メディアコンテンツ処理技術」「ヒューマンコンピュータインタラクション技術」「情報空間と物理空間が融合した社会を支える計測・制御・安全技術」といった分野の計30件が選ばれた。平均年齢は29.5歳で、大学院生ら学生は6人、女性は7人、外国人は2人。研究期間は1年4カ月。研究費は300万円を標準に最大500万円。

「ACT-I」研究総括の後藤真孝氏
「ACT-I」研究総括の後藤 真孝氏

 ACT-Iでは、情報学の最先端の領域で研究実績がある気鋭の研究者12人が領域アドバイザーとして支援対象研究を助言、指導する。研究総括の後藤真孝(ごとう まさたか)産業技術総合研究所首席研究員は「研究総括と12人の領域アドバイザー全員が一体となって(対象)若手研究者が飛躍できるように能力を引き出していきたい」と話している。

 領域アドバイザーである五十嵐健夫(いがらし たけお)・東京大学大学院情報理工学系研究科教授は「世界の科学技術の偉大な研究成果は、例えばニュートンもアインシュタインも20代で成し遂げている。若くてもプロの研究者の自覚を持つことが重要で(このプログラムは)若くても対象になるのでそういう自覚を持てる」。河原林健一(かわらばやし けんいち)・国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系教授は「日本は世界をリードする(研究分野の)若手プレーヤーが少ないがこれを増やさなければならない。10年後に(世界をリードする)そういう人材がこのプログラムから出ることを期待したい」とそれぞれコメントした。

 また湊真一(みなと しんいち)・北海道大学大学院情報科学研究科教授は「これからは研究者も自分が育ってきた研究コミュニティだけを発展させればいい時代ではなくなる。異分野の研究者同士が互いに自分の研究を説明し、どんな未来にしたいかも伝え合わなければならない。(選考された研究者は)フレッシュな活力と未来への可能性を感じる」 と話している。

 JSTはACT-Iと同時に、CREST13件、さきがけ22件のそれぞれ新規研究課題を決めた。

 (詳しくはACT-Ⅰホームページ参照)

図 ACT-Iプログラムの仕組み(JST作成)
図 ACT-Iプログラムの仕組み(JST作成)

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