原因不明の強い倦怠(けんたい)感などが長く続く「慢性疲労症候群(CFS)」の患者の血液中に特有な物質があることが分かった、と大阪市立大学などの研究グループが17日発表した。CFSはこれまで診断が難しく、治療法も確立していなかった。研究グループは、血液検査による客観的な診断法や治療法開発につながる可能性がある、としている。研究成果は英科学誌電子版に掲載された。
研究グループによると、CFSは強度の疲労や倦怠感により半年以上も健全な社会生活が過ごせなくなる。原因については、ウイルスや細菌の感染、過度のストレスなどが引き金となって神経系・免疫系・内分泌代謝系の変調が生じ、脳や神経系が機能障害を起こすためと考えられている。しかし詳しい発症メカニズムは不明という。国内患者は推計30万人以上で、女性の割合がやや多いという報告もある。
研究グループは、大阪市立大学医学研究科システム神経科学と理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター、関西福祉科学大学健康福祉学部、慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究者で構成された。研究グループは、2回の試験(試験1、試験2)合わせてCFSの患者67人と健常者66人を対象に血液を採取し、発症に関係するとみられる物質を「メタボローム解析」と呼ばれる手法で解析した。
その結果、患者は健常者に比べて尿素回路などで代謝機能が低下していることが判明した。また、血液中にある4種類の代謝物質の比率が患者と健常者を判別する上で有効であることも分かったという。この4物質はピルビン酸、イソクエン酸、オルニチン、シトルリンという代謝物質。特にピルビン酸とイソクエン酸の比と、オルニチンとシトルリンの比を組み合わせた指標は高い精度で患者を判別することができ、客観的な診断マーカーになり得ることが明らかになったという。
研究グループは「4種類の代謝物質の変化は病態を反映している可能性があり、生体内のどの部分に機能低下があるかを推測して患者の病態に合わせた治療方針を立てる上でも役立つことが期待される」としている。
関連リンク
- 大阪市立大学プレスリリース「慢性疲労症候群の客観的診断に有効なバイオマーカーを発見」