国連大学が世界171カ国を対象に自然災害に見舞われる可能性や対処能力などを評価した「世界リスク報告書2016年版」をまとめ、このほど公表した。日本は地震などの「自然災害に見舞われる可能性」では世界で4位と高位だったが、対策を講じているために「(自然災害に対する)脆弱性」順位では低くなり、総合評価となる「世界リスク評価」(WRI)では17位だった。欧米の先進国の多くのWRIは100位より下位だった。
国連大学の「環境・人間の安全保障研究所」などのチームは、地震、台風、洪水、干ばつ、海面上昇の5種類の自然災害について28項目の指標を分析した。その結果、WRIの1位は南太平洋の島国バヌアツ、2位はトンガ、3位はフィリピン、4位はグアテマラ、5位はバングラデシュなどの発展途上国だった。これらの国は地球温暖化による海面上昇や洪水による被害が懸念されている。
日本は自然災害に見舞われる可能性では4 位だったが、インフラ整備や対処能力、適応能力などが評価されて脆弱性では最下位(スイス)にかなり近い位置を占め、これが加味された総合評価となるWRIは17位になった。先進国の米国は127位、カナダは145位、英国は131位、フランスは152位などで日本は目立って高位だった。アジアの中国は85位、韓国は113位。対象171カ国で最も低かったのは中東のカタールで、災害に見舞われる可能性が低い上に災害への対処能力などが高いと評価された。
国連大学によると、2015年の1年間に世界中で災害が346件発生し、ほぼ1億人が被災し、22,000人以上が死亡、665億ドルの経済的損失があったという。世界リスク報告書2016年版は、自然の脅威がもたらす被害を軽減するためのインフラ整備の重要性を強調し、WRI上位の発展途上国への国際的人道支援の必要性も指摘している。
関連リンク
- World Risk Report 2016
- 国連大学ニュース「脆弱なインフラにより災害リスクが高まる-世界リスク報告書」
- 国連大学プレスリリース「世界リスク報告書2016年版:インフラ未整備は災害の危険性を増幅させる」