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DNAを切らずにゲノム編集 神戸大など安全・確実な新手法開発

2016.08.09

 生物の遺伝情報であるDNAを改変できる「ゲノム編集」の技術で、これまでのようにDNAを切らずにより安全、確実に改変できる新しい手法を、神戸大学などの研究グループが開発した。研究グループは、植物の品種改良や疾患研究、創薬開発に応用でき、将来は新しい遺伝子治療手法としても期待できる、としている。研究成果はこのほど、米科学誌サイエンス電子版に掲載された。

 ゲノム編集は、DNAを狙った部位で切ることにより「生命の設計図」である遺伝子を狙い通りに改変できる技術として注目され、世界中で研究が進んでいる。これまでの手法は二重らせん構造のDNAの鎖を酵素によって切断し、そこに別の遺伝子を組み込んだり、遺伝子の一部を壊したりする。この手法は、狙い通りに改変できずに想定外の塩基配列ができたり、染色体切断による毒性により細胞が死滅することもあり、安全、倫理上の課題も抱えていた。

 神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科と東京大学先端科学技術研究センター、静岡県立大学食品栄養科学部環境生命科学科による研究グループが開発したのは人工酵素複合体「Target-AID」。

 研究グループは、DNAをつくる塩基に付いているアミノ酸を取り除いて塩基を変化させる脱アミノ化酵素「デアミナーゼ」に着目。デアミナーゼを付加した人工酵素複合体Target-AIDをつくった。「ガイドRNA」と呼ばれる部分が狙った部分を認識してDNAの二重らせん構造を一本鎖にかい離させ、そこにデアミナーゼが働いて改変したい部分の塩基を変換する仕組み。このTarget-AIDをDNAの狙った部分で機能させることにより、DNAを切断せずに狙い通りに改変できることを実証したという。

図 Target-AIDの仕組み(神戸大学、同大学などの研究グループ提供)
図 Target-AIDの仕組み(神戸大学、同大学などの研究グループ提供)

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