神経幹細胞移植だけでは機能回復が難しかった慢性期の脊髄損傷にリハビリテーション(リハビリ)を併用することで回復が促進されることを慶應義塾大学医学部の研究グループがマウスの実験で明らかにした。研究グループは臨床研究も計画しており「脊髄損傷に対する再生医療の新しい扉を開く」としている。研究成果はこのほど英科学誌電子版に掲載された。
事故やスポーツなどが原因で脊髄が傷つく脊髄損傷は運動、感覚障害が起きて日常生活に支障をきたす。研究グループによると患者は年間新たに約5千人発生。損傷からの時間により、直後の急性期、数週間以内の亜急性期、かなり時間が経った慢性期に分類される。これまで急性期や亜急性期の患者の神経の働きを補うために実施された神経幹細胞移植治療は慢性期の患者には効果がないとされてきた。
慶應義塾大学医学部脊髄損傷治療研究グループは、脊髄が損傷した慢性期のマウスに神経幹細胞を移植した上、歩行訓練を8週間繰り返したところ、運動機能はかなり回復した。移植しかしなったマウスや移植をせずにリハビリしかしなかったマウスより目立って回復したという。
研究グループは、同じ神経幹細胞でも人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来の細胞を使って脊髄損傷患者の治療を目指す臨床研究を来年中にも実施する。臨床応用が実現すれば慢性期患者に対しては神経幹細胞移植とリハビリとの併用療法が行われる見通しだ。
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- 慶應義塾大学プレスリリース「治療が難しいと考えられてきた慢性期脊髄損傷 神経幹細胞移植とリハビリテーションの併用が効果的」