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難治がんを増殖させるタンパク質を発見 新治療薬やマーカー開発に期待

2016.06.23

 早期発見が難しい膵臓(すいぞう)がんや肺がんなどの「難治がん」のがん細胞を増殖させるタンパク質を見つけたと、大阪大学の研究グループがこのほど米医学誌に発表した。同グループはマウスの実験でこのタンパク質の働きを阻害する抗体を使ってがんの増殖を抑えることに成功し、新しい治療薬や腫瘍マーカー開発につながると期待される。

 大阪大学大学院医学系研究科の菊池章(きくち あきら)教授らは、膵臓がんや肺がんを悪化させることが既に知られていたタンパク質「Dkk1」が、がん細胞表面で別なタンパク質「CKAP4」と結合すると、がん細胞の増殖を促進することを明らかにした。また今回新たに見つけたCKAP4は、Dkk1に関する情報を細胞内に伝える「受容体」の役割をしていることも突き止めた。

 菊池教授らは、消化器外科、呼吸器外科などの協力を得て、承諾を得た患者を調べたところ、膵臓、肺それぞれのがん患者の60%以上で両タンパク質が目立って増えており、両タンパク質が多い患者は治療成績も良くなかった。またCKAP4の働きを阻害する抗体をつくり、両タンパク質が増えた状態のがん細胞を移植したマウスにこの抗体を投与すると、がんの増殖を抑えることができたという。

 研究グループは、これらの結果から、Dkk1、CKAP4という二つのタンパク質が新しい腫瘍マーカーとして利用でき、CKAP4抗体が膵臓がん、肺がんの効果的な抗がん剤開発につながる可能性がある、としている。

 2013年統計では、肺がんは男性の部位別死亡率の1位、女性の2位、 膵臓がんは男性の5位、女性の4位で、男女とも死亡率は高い。研究グループによると、二つのがんの患者に対する「分子標的治療薬」と呼ばれる最近の抗がん剤も薬剤耐性ができるといった課題があり、治療効果は限定的だった。

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