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騒音性難聴発症のカギ握るタンパク質突き止める 東北大、防衛医大グループ

2016.01.19

 大音量を聞くことによる「騒音性難聴」の発症のカギを握るタンパク質を見つけた、と東北大学と防衛医科大学の研究グループが18日発表した。研究グループによると、このタンパク質の働きを強めると、聴力低下を防ぐ効果があることも明らかになり、今回の成果は、多くのお年寄りを悩ませる「老人性難聴」の予防治療につながる可能性もあるという。研究成果は同日付の英科学誌に掲載された。

 騒音性難聴は、工事、機械作動などによる音や爆音、アンプで増幅した楽器音など、大音量を聞くことがきっかけになって生じる。音の振動を感知し、電気信号に変えて脳に伝える内耳の感覚細胞が失われることが主な原因。現在、決定的な治療薬はない。

 東北大加齢医学研究所の本橋ほづみ(もとはし ほづみ)教授と防衛医大の松尾洋孝(まつお ひろたか)講師らの研究グループは、生体の酸化ストレスに反応し、生体防御メカニズムの中で重要な役割を担う「NRF2」と呼ばれるタンパク質が騒音性難聴の発症にも関係する、と考えマウスで実験した。

 研究グループが、NRF2が働かなくなったマウスに大きな音を聞かせると聴力が著しく低下。正常なマウスに、NRF2の働きを強める薬剤をあらかじめ投与して大きな音を聞かせると聴力低下を食い止めることができた。これらの結果からNRF2は、大きな音による酸化ストレスから内耳を保護し、これにより騒音性難聴の発症を防いだことが分かった、という。

NRF2の活性化がもたらす騒音性難聴の防御効果。東北大学と防衛医大の研究グループ提供
図.NRF2の活性化がもたらす騒音性難聴の防御効果(東北大学と防衛医大の研究グループ提供)

 研究グループは、マウス実験の結果を基に、陸上自衛隊の協力を得て約600人の隊員の遺伝子の個人差を調査した。その結果、NRF2の産生が少なくなる遺伝子を持つ隊員は、そうでない隊員と比較してより高い比率で騒音性難聴の初期症状が見られ、騒音性難聴になりやすく気をつける必要があることも判明した。

 老人性難聴も内耳の酸化ストレスが原因とみられている。このため、NRF2の働きを強める薬剤により、このタイプの難聴を改善する効果も期待される。

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