スギのような樹高の高い木の葉には、水分を必要に応じて補給する「貯水タンク」の役割をする組織がある−。神戸大学大学院農学研究科の石井弘明(いしい ひろあき)准教授らの研究グループがこのような興味深い発見をした。
高い木についてはこれまで、根から吸収した水分を先端まで運ぶには重力の影響もあり、木の上の部分では水分不足になると考えられていた。しかし、樹高50メートルを超える秋田スギのような背が高い木の上の葉にも水分が補給されているのはなぜか、分かっていなかった。また、樹木学会など関連学会でも、木はどこまで高く水分を運ぶことができるか、といった研究が主流だった。
石井准教授らは、まず、樹高世界一とされるセコイアメスギ(登録世界一は米国カリフォルニア州のスギ。115.6メートル)に登り、さまざまな高さの葉を採取し比較した。その結果、高いところから採取した葉ほど、根から水を吸い上げる組織(仮道管)が少なくなる一方、葉の表面から吸収した雨や霧の水分を貯める組織(移入組織)の割合が多くなることを発見した。次に、樹高日本一(50メートル以上)の秋田スギにも同様の組織があるか調査した。樹上で採取した秋田スギの葉を瞬間冷凍して電子顕微鏡で観察したところ、セコイアメスギと同様の貯水機能があることを確認した、という。葉の移入組織の細胞は、夜間に水を含み膨らんでいたが、日中は収縮していた。
これらの調査や観察、分析から、セコイアメスギや秋田スギなどの樹高の高い樹種は、葉の貯水組織が給水タンクの役割をし、日中水分不足になりやすい木の上の部分の葉でも必要な水分を保持して光合成などの生理機能を維持していることが分かった。
関連リンク
- 神戸大学プレスリリース「背の高い木は貯水タンクを持っていた」